千尋の勇気や成長は、どの世代にも刺さる『千と千尋の神隠し』。
不思議な世界観のある「油屋」に訪れる神様の一覧を一挙紹介していきます。
そして、なぜ神様たちがお風呂に入りに来るのかを調べたら、モデルとなったお祭りの存在が明らかになりました。
なんと、そのお祭りは今でも開催されているのです。
神様たちは、基本的にセリフはありませんが、それぞれのキャラクターに存在感がありますよね。
そんな神様たちに詳しくなると、今よりももっと『千と千尋の神隠し』が楽しめますよ!
では、どんな神様がいるのかさっそく見ていきましょう。
『千と千尋の神隠し』神様はなぜお風呂へ入りに来るのか?由来は?
神様がお風呂に入る由来は「霜月祭(しもつきまつり)」から来ました。
神様が疲れを癒しに油屋へ来る設定は、長野県の遠山郷などで今でも毎年12月に開催される霜月祭を参考にされています。
霜月祭は、「神様にお湯を差し上げるお祭り」と言われ、1979年重要無形民俗文化財に指定されているものです。
日本中の神様を呼び、お風呂に入れて元気にさせるんですね。
宮崎駿監督は、テレビ番組でこのお祭りの存在を知って強い影響を受けました。
インタビューでも「霜月祭というおもしろい祭りがあり、そういったお祭りが大好きで参考にした」と言及しています。
宮崎駿監督は、いろいろな文化やお祭りを参考に物語を考えることがよくあるのです。
今回も自分が好きだと感じたお祭りを参考にしたのだと考えられますね。
遠山の霜月祭という伝統行事では夜に湯を沸かし、神を迎え、面(おもて)を付けて人が神になりきり=神と一体化した人々がその湯を浴びる(湯切り)ことで体を清めて、湯を浴びながら踊り狂い、朝になると浄化した神を返すというもので、千と千尋の神隠しの元ネタだという(実際宮崎駿が言及している) pic.twitter.com/TpwA38VLAN
— 統合の失調(てすら) (@Kohler_volnt) May 25, 2021
ちなみに、千尋の名前も霜月祭から来ていると考えられます。
神を送る「ひいな降ろし」で、舞手が炉の5隅に白紙をちぎって置き、観客と「何尋?(何拾う)」「千尋!(ちり拾う)」と掛け合うものがあるのです。
霜月祭を参考にし、さらに千尋の掛け合いもあるなら、その掛け合いから主人公の名前をとったと考えられますよね。
それにしても、神聖な神様がなぜ垢がたまり汚れるのか疑問に思いませんか?
神様も、人間の願いを叶えていると自分のエネルギーを使い続け、疲れしまいます。
疲れた後は、人間と同じようにお風呂に入って疲れを取ろうと考えるのでしょう。
油屋は「八百万の神様たちが疲れを癒しに来るお湯屋」と湯婆婆が言っていましたよね。
数えきれないくらい多くの神様たちがたまった疲れを癒しにくる場所です。
温泉には厄(やく)落としや、開運効果があると言われています。
油屋に来るさまざまな神様たちも、普段は人間や妖怪の願いを自分のエネルギーを使って叶えているので疲れますよね。
油屋に来る神様たちは笑顔の方もいれば、楽しそうに夜を過ごしている神様もいるのが見受けられます。
神様たちは、油屋に行くことを楽しみに日々人々の願いを叶え頑張っているのかもしれませんね。
ちなみに・・・
『千と千尋の神隠し』の主人公荻野千尋のモデルは、当時日本テレビの制作担当だった奥田誠治(おくだ せいじ)さんの娘、千晶(ちあき)さんです。
千尋のモデルは、当時日本テレビ映画事業部のプロデューサーであった奥田誠治氏の娘である奥田千晶さんです。宮崎駿監督が「#もののけ姫」の次の作品を構想している頃、千尋と同じく10歳でした。#千と千尋の神隠し pic.twitter.com/th34mvVXXV
— キャッスル@ジブリフリーク (@castle_gtm) January 7, 2022
このことは、ジブリファンの中でも有名な話です。
では、なぜ千晶が千尋になったのか?
そのヒントが「霜月祭り」だったのですね。
さあ続いていよいよ、印象的な神様たちをご紹介していきますよ!
最初は、いかにも神様らしいお姿の春日様(かすがさま)です。
『千と千尋の神隠し』神様:春日様
春日様は、神社の管理者である宮司さんのような恰好をしている神様です。
春日大社を実体化した神様なんですよ。
春日様がつけているお面は、春日大社で実際に使われているお面をモデルにしているようですね。
そのお面は雑面(ぞうめん)と呼ばれています。
春日様がつけているのは、少しアレンジを加えたジブリのオリジナルのお面でしょう。
春日様のお面は一瞬不気味そうに見えますよね。
でも、よーく見てみると顔のようなかわいいデザインをしていて実は隠れファンが多いのです。
こんなところに千と千尋神社⛩️20
春日大社
奈良県奈良市不思議の町で船から降りてくるお面の神様は春日様。春日大社の舞楽で使用されるお面がモデルです(他の神社でも使用されていますが、紹介はまた)
朱塗りの回廊が大変美しいです✨神の遣いとされる鹿さんもたくさんいらっしゃいます🦌 pic.twitter.com/xkTIHHAFV9
— みずかわ (@mizumizu_kawa) June 26, 2021
物語序盤、千尋が消えかかっているシーンがあります。
その千尋の近くに、大勢の春日様が遊覧船から降りて来ます。
春日様といえば、このシーンが1番印象に残っているのではないでしょうか。
春日大社は日本の各地に存在しているので、各地から集まった春日様がみんなで油屋に息抜きに来ているのがわかりますね。
遊覧船の部屋から出てきたときのようにお面だけの姿のときもありますが、基本的には宮司さんの恰好をして登場しています。
また、春日様は隠語で「チップは一切渡さないケチなお客」という意味があるのです。
硫黄の上の札をもらっていたりしていましたね。
そのほか、お風呂場のご予約の欄に春日様の名前があったりするので身分が高い神様とわかります。
でも、作中ではケチな部分が出てこないため、本当にケチな神様かどうかはわかりません。笑
オクサレ様の体のとげを湯屋一同で抜くシーンがありますよね。
そこでは、扇子を持って一緒に掛け声をしている姿があります。
そのあとの、千尋がオクサレ様をきれいにし、大儲けしをしました。
その喜んでいる神様たちの中に春日様が舞い踊っている姿がありますよね。
ケチだと言われていますが、決して他人に冷たいわけではなさそうですよ。
むしろ他人の喜びを一緒に嬉しそうにする姿は優しい人の典型だともいえますね。
続いては、千尋がエレベーターで乗り合わせた、あの神様をご紹介します!
『千と千尋の神隠し』神様:おしらさま
千尋がリンに連れられて湯婆婆の部屋まで向かうあのシーン。
エレベーターで会う神様が、おしらさまです。
おしら様は大根の神様と言われていますが、もともとモデルの神様がいました。
気になりませんか?
そしてもう一つ気になるのが、あのエレベーターのシーンで、なぜ人間である千尋をみてスルーしたのでしょう?
見ているこちらもドキドキするシーンでしたね。
気になる方はこちらの記事をオススメします。
『千と千尋の神隠し』大根の神様はなぜ千尋を助けた?名前や正体、エレベータでの優しいシーンを検証!声優はセリフ言ってる?
では続いて、怖い鬼の顔をした牛鬼(うしおに)と呼ばれる神様をご紹介しましょう!
『千と千尋の神隠し』神様:牛鬼(うしおに)
牛鬼は、主に西日本に伝わる妖怪とされています。
海岸付近に出現するため、浜辺を歩く人間を襲うと言われています。
調べてみると、妖怪の一部には、悪霊をはらう神の姿をしたものも存在しているようですね。
『千と千尋の神隠し』に出てくる牛鬼はその部類の神様でしょう。
よく、なまはげだと思われがちですが、妖怪の中の神様であることがわかりましたね。
一度見てみたいですね。以前、『千と千尋の神隠し』を授業で扱っていたとき、「牛鬼」はこれだと、学生さんに教えてもらいました。てっきり「なまはげ」だとおもっていたもので。 https://t.co/HUD8i1R5Rx
— Hatakama Kazuhiro (@HatakamaK) October 29, 2020
神様の中では怖い見た目をしている牛鬼。
ところが、実は人気キャラクターランキングで5位に入っているのです!
リンと千尋がエレベーター待ちをしているときエレベーターから出てくる神様ですよね。
そこで油屋の浴衣を着ている、ふくよかな姿が妖怪を感じさせないかわいさがあると人気を集めているようです。
千尋が牛鬼とエレベーターで出くわしてしまったシーン、覚えていますか?
従業員のカエルは人間のにおいがすると言っていたので牛鬼も気づいていたはずです!
ところが、そのまま素通りしていきました。
人間が入り込んでいるくらいではわざわざびっくりしない心の広さがあることがわかるシーンですね。
また、千尋が"両親はここにいない"と言い当て、みんなが喜んでいる最後のシーン。
そこには、牛鬼がフラダンスのように体を揺らして嬉しそうにしている姿もありました。
顔は笑っていなくても、体で表現しているため、とてもかわいいですね。
次は、千尋の仕事ぶりを賞賛した、オクサレさまをご紹介します!
『千と千尋の神隠し』神様:オクサレさま(河の神)
作中では、オクサレさまと言われていましたが、実は高名な河の神様です。
あのドロドロとともに登場し、見ているこちらまで悪臭がただよって来るようなシーンですよね。
千尋は、汚れてしまったオクサレさまをキレイにすることに専念しました。
その仕事ぶりに、河の神様がニガダンゴを千尋に手渡し声高らかに笑いながら去っていきます。
河の神様の姿となったオクサレさまは、翁のお面を付け体は白い蛇のような・・・
ホントご高名な神様だということがわかりましたよね。
そのときにセリフが「よきかな」です。
この言葉っていいですよね。一言で千尋の仕事を讃えているようで私は大好きです。
こちらの記事でくわしくお伝えしていますよ!
千と千尋|よきかなの意味ってなに?声優はだれ?オクサレ様(神様)の名前は河の神!
続いては、かわいいと大人気!ひよこの姿をした神様をご紹介しましょう!
『千と千尋の神隠し』神様:オオトリ様
ひよこのような姿をした神様は、オオトリ様です。
目の焦点が合っていないせいか、どこか間の抜けたような雰囲気の神様。
「えっ、これも神様なの?」と感じた方も多いのではないでしょうか。
たくさんのオオトリ様がお風呂に入っているシーンは、とっても印象的ですよね。
そして、ほかの神様とくらべると大勢で油屋へいらしているような・・・
宮崎駿監督は、疲れを癒しにくる神様たちについて、次のように語っています。
ある神様たちは社員旅行で来てるのかなとか思いながらね(笑)。
引用:千と千尋の神隠し 映画パンフレットより
なるほど!だから春日様やオオトリ様など、大勢でいらしている神様がいらっしゃるのだなーと。
とってもイメージが膨らみますね。
さて、このオオトリ様はなぜ"ひよこ"なのに神様となったのでしょう。
気になりませんか。くわしくはこちらをどうぞ!
『千と千尋の神隠し』ひよこの神様の名前はオオトリ様!モデルは?かわいいシーン!ポニョにも出てる?
続いては、ナマハゲ?と思わせる、あの神様をご紹介ますよ!
『千と千尋の神隠し』神様:おなま様
おなま様は、秋田県の伝統的な民族行事の神の使い「なまはげ」をモデルにしています。
なまはげは、怠けや悪い習慣の戒めに、人間の世界に来訪する神のことを指すのです。
2本の角・藁の衣装をまとい、出刃包丁を持っている姿。
これはまさしく、なまはげの特徴といってもいいですよね。
その特徴がそのままおなま様になっていますが、おなま様は藁ではなく、葉っぱをまとっているように見えます。
そして、なまはげは鬼の顔をしていますが、おなま様は鬼のように怖い顔ではなく、人間寄りの顔をしていますよね。
ジブリ仕様でかわいさがあるので、ネットではかわいいと言われているのでしょう。
千と千尋に出てくるなまはげみたいな神さますごい好き
— 朝霧 (@haze__tk) August 16, 2019
千尋が息を止めながら、油屋へ続く橋を渡っているときにおなま様が登場します。
いらっしゃいと、おなま様へ声をかけている従業員のナメクジ女に、とてもニコニコしながら油屋に入っていっているのがわかります。
みんなで油屋に来るのを楽しみにしていたのかもしれませんね。
ほかの神様と比べて登場シーンが圧倒的に少ないおなま様。
でも、唯一ニコニコしている顔がわかるため、とても印象に残る神様ですね。
最後は、いよいよハクの登場です!
『千と千尋の神隠し』神様:ニギハヤミコハクヌシ
川の神様であるハクの本当の名前で、漢字で書くと「饒速水小白主」です。
ハクも、湯婆婆の弟子であるとともに、もともとは河の神様だったのですね。
ハクは湯婆婆に名前を奪われ、自分の本当の名前をどうしても思い出せずにいました。
しかし、千尋がハクに川で助けられたことを思い出し、その記憶をたどり千尋はハクの本当の名前を思い出したのです。
本当の名前を取り戻したハクは、湯婆婆の弟子をやめ、元の世界に戻ると千尋に言いましたよね。
でも、本当に無事にもとに世界に戻れたのでしょうか。
ネット上では、幻のエンディングといわれているシーンがあります。
ここからは、都市伝説化しているお話しですが、お付き合いくださいね。
公開から期間限定で一部の劇場だけで流れたとされているエンディングがあるのですが、そこではハクのその後が描かれていました。
普通のエンディングは、千尋がハクと別れてトンネルを抜け、車で来た道を帰っていくものですよね。
幻のエンディングは、そのあとに物語が少しだけ続くのです。
千尋が新居の周りを散歩しに行くと、橋のかかった小川があることに気が付き、そこで千尋は忘れていた油屋でのハクとの記憶がフラッシュバックしました。
ハクのもといた川は埋め立てられたので、ハクの生まれ変わりの川であることに気が付いたかのように物語が終わるエンディングがあったとされています。
この幻のエンディングと言われているものが本当にあったのであれば、ハクは無事にもとの世界に戻り、また千尋をそばで見守ることができますよね。
神様の中でもハクは千尋との時間や関わりが1人だけ違うため、誰しもが無事にもとの世界に戻れることを願っています。
『千と千尋の神隠し』神様のまとめ
いかがでしたか?一覧にしてみると「千と千尋の神隠し」には、意外とたくさんの神様がいるのがわかっておもしろいですね。
また「千と千尋の神隠し」の参考になったお祭りがあることにびっくりしました。
霜月祭は、地域によって違う名称で呼ばれているようなので、実は自分の近くで「千と千尋の神隠し」のモデルになったお祭りが開催されているのかもしれませんね。
だいたいの神様にはモデルになった神様がいますが、さらにジブリ要素が加わりかわいく描かれています。
だから神様たちは、ファンからひそかに人気があるのでしょう。
どんな神様でも、垢や汚れを落としたい、お風呂に入りたいと思ったときに1番に思い浮かべる場所が油屋なのかもしれません。
神様によってさまざまな事情があり、人間の手によってオクサレ様のような姿になった神様も中にはいます。
中にはそういった特別な事情を持った神様たちも油屋に助けを求めにくるときもあるのです。
千尋はどんな姿のお客様でも拒否せずほかのお客様と同じように対応することで、のちに千尋を救う「にがだんご」をもらい、数々の困難を乗り越えました。
日ごろから、何に対しても神様が存在していると思い大切に過ごすことで、千尋がたくさんの神様に助けられたように、神様が私たちを助けてくださる日がくるのかもしれませんね。
油屋には、ほかにもさまざまなキャラクターが登場します!
魅力全開で千尋の成長を見守っているキャラクターたちは、こちらの記事で紹介しています。
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