千と千尋|カオナシ正体の意味に込めた宮崎駿監督のメッセージとは?

千と千尋の神隠し
引用:https://www.ghibli.jp/works/chihiro/
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今回は、カオナシの正体について考察していきたいと思います。

宮崎駿監督はカオナシの正体については「みんなの心の中にいる」と語っています。

そこには、どんな意味が込められているのでしょうか?

 

2001年7月に公開された『千と千尋の神隠し』。

主人公は、10歳の甘えん坊な一人っ子 荻野千尋(おぎの ちひろ)、さまざまな出会いと経験を積み重ねて、生きる力(人間力)を獲得していくまでの姿を描いた物語です。

そして千尋とダブル主演!とまではいかないまでも準主役といってもいいくらいの立ち位置にいる

"カオナシ"

謎の多いキャラですが、実はもともと準主役級のポジションは与えられていなかったキャラクターでした。

ネット上では、なんの神様?や何者なの?かわいいなんて声もあがっています。

今回は『千と千尋の神隠し』カオナシの正体、何者かについてや魅力に迫ってみたいと思います!



『千と千尋の神隠し』カオナシの正体に込めた宮崎駿監督のメッセージ

カオナシの正体について宮崎駿監督は、このように語っています。

「カオナシは、みんなの心の中にいる」

深いですね。

私は「たしかに!」と自分の胸に手を当ててしまいました(笑)。

カオナシは、千尋に優しくされたことがきっかけで気を惹こうと躍起になります。

でも、千尋は全くカオナシに興味を示しません。

カオナシ的には、優しくされた→私を見て欲しい という思い。

最近よく聞くようになった言葉「承認欲求」とも受け取れますね。

この映画が公開されてもう20年になりますが、この当時から宮崎駿監督は世の中に"いいね!"が欲しくて躍起になる人々が溢れると考えていたのかと思うと、もう時代をよむ視点の凄さ・深さに「すごい」という言葉しか出てこない私です。

引用:https://www.ghibli.jp/works/chihiro/

これらを考えあわせると、カオナシは神様ではないということが見えてきます。

"人間の尽きない欲"や、誰しもが持っている"人間の弱い部分"を擬人化したキャラクターがカオナシの正体です。

私の身近にも"カオナシのような人だな"と感じる人がいます。

そしてときどき、自分もカオナシになっていると気づいてハッとします。

『千と千尋の神隠し』から、宮崎駿監督の人間とはカオナシのような一面を持ち合わせているという、深い教えを受けたような気づきがありました。



『千と千尋の神隠し』カオナシの正体!セリフの声が変わるのはなぜ?

劇中では、カオナシの声がいろいろ変わっていますが、それはどうしてなのでしょう?

それは"呑み込んだものの声を借りないと会話ができないから"。

油屋の従業員である蛙を呑み込めば、その蛙の声になって自分の欲求を訴えています。

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人の声を借りないとコミュニケーションが取れないなんて、なんだかとっても寂しい。

しかし、それは現代の子どもたち・若者に対して警鐘を鳴らしているようにも受け取れますね。

自分の意見がない。
周囲の意見に同調するのが良いことだと感じている。
最近では、学校でも"子どもの主体性"という言葉を多く使うようになってきました。
それは逆に、人の意見に同調する子どもが多くなったということの現れなのかもしれません。



『千と千尋の神隠し』カオナシの正体はニセモノで気を惹く"弱い心"の持ち主

千尋の気を惹きたいカオナシは、たくさんの金を手から出します。

しかしそれは、本物ではなく土からできているニセモノです。

その金を見て、油屋の従業員だけが大喜び!金や物で人の心を操るなんて、やはりみんなの心の中にいるカオナシだなぁと思ってしまいます。

しかし、千尋は全く気にも止めません。

そして、千尋の態度に納得がいかないカオナシは、ますます暴れ出し、自分の想いを伝えたくて蛙を呑み込み、蛙の声で"千欲しい〜、千欲しい〜"と訴えます。

千という自分の心の拠り所を見つけたカオナシは、千尋に甘えたかったのでしょうね。

抱っこして欲しいのに抱っこしてもらえない子どものように暴れる姿が、なんともかわいそうです。

 

その後、千尋がオクサレ様からもらった"苦団子"をカオナシに食べさせてゲロを吐きながら小さくなっていくシーンは、自分をニセモノの金で大きく見せていたという虚栄心を露呈させる印象的なシーンだと感じます。

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『千と千尋の神隠し』カオナシの正体って実はいいやつ?モデルは?

黒いマントを着て、お面を被っている"カオナシ"なんだか怖い・怪しいイメージです。

しかし、物語が進むにつれて、カオナシの表情も落ち着いてきているように見受けられます。

ってことはいいやつなの?と思ってしまいますよね。

 

実は、モデルがいると言われています。それは、

『借りぐらしのアリエッティ』や『思い出のマーニー』の米林宏昌(よねばやし ひろまさ)監督です。

スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんが話をしたことから、このモデル説が浮上したとのこと。

しかしこの件については、ご本人がインタビューで次のように答えています。

モデルではなく自分が描いたキャラクター(カオナシ)を見た宮崎駿さんが自分(米林監督)にそっくりだ!と言ったことがエピソードとしてあるため、と語っています。

実際の写真を見ると、本当に米林監督に似ていて、びっくりしてしまいました。




当初カオナシは、ハクに手をひかれて千尋が油屋へ通じる橋を渡る際に、欄干の上ですれ違うだけのキャラクターでした。

ところが、宮崎監督が描いていた構想では上映時間が3時間を超えてしまうため、物語の中盤から、カオナシをメインに登場させることで上映時間の短縮を図ったという経緯があるのです。

なので、千尋が必死になって息を止め、橋を渡るときにすれ違うカオナシには、物語の中盤以降のストーリーに導くための、大きな意味があったということになりますね。

初めて千尋と会った時のカオナシの表情と、中盤以降のカオナシの表情に少し違いがあることにお気づきですか?

このことについて、作画監督の安藤雅司さんはインタビューで次のように語っています。

「カオナシは基本的には無表情なんですけど、どうしても少しだけ表情をつけちゃいましたね。本当はもう少し能面的に、まるっきり無表情にして陰影などの付け方で表情を読ませた方が面白かったかもしれません。カオナシは、湯屋の住人たちを飲み込んで行くんだけど、飲み込むことでその人の人格も吸収して、どんどん理性的になっていくというのも面白いかなと思ったりしてしまいましたね。だんだん人間らしくなってカッコよくなっていったりして」

"人間の持つ弱い心"の象徴でもあるカオナシが穏やかな表情になっていく姿は、そんな弱い自分を受け止め"自分はどうあるべきか"を考えているようにも感じ取ることができます。

 



『千と千尋の神隠し』カオナシの正体!ケーキを食べるシーンがかわいい!

そんなカオナシも、物語が進むにつれてどんどん心が満たされていきます。

そして、千尋と坊ねずみたちと電車に乗るシーンでは、すっかり穏やかな表情になっています。

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そして、銭婆の家でケーキを食べるシーンは、とてもおりこうさんです。

カオナシの最後のシーンでは、銭婆のとなりで手を振る様子が、心なしか笑顔になっているように感じられますよね。

千尋の勇気によって、カオナシの心も満たされていくという展開が、見ていてとても心地よさを感じます。



『千と千尋の神隠し』カオナシの正体は親や子どもたちへのメッセージ

宮崎駿監督が映画制作のいちばんのコンセプトとしているのが子どもたちに向けた映画を作ること。

主人公の千尋と同じ10歳の少女に向けた映画として制作された『千と千尋の神隠し』と言われています。

ではこの作品の、子どもたちに向けた大切なメッセージは何でしょうか?

私は、子どもだけではなく子育てをする親に向けてのメッセージも感じています。

 

先にも触れましたが、カオナシというキャラクターは当初、千尋と橋の上ですれ違うだけのキャラクターでした。

それが、さまざまな理由で準主役級のポジションとなったカオナシ。

引用:https://www.ghibli.jp/works/chihiro/

メッセージを整理するために、作中での彼の変容を挙げてみました。

【作品序盤】 
誰からも気に留められず影が薄い存在。
【作品中盤】
千尋の気を引こうと暴れ出す
【作品終盤】
大人しくなって自分の居場所を見つける

こうしてみると、子育てに似ているなぁと感じたのです。

言葉を獲得できる以前の子どもは、自分の気持ちを伝えるために泣き出したり、思いが伝わらないと暴れ出したりします。

そのときに大切なのが同調です。

子どもが泣き出したり暴れ出したら「そうだね、痛かったね」「悔しかったね」「うまくできなかったね」などの声がけから向き合いが始まります。

自分の思いが伝わると、子どもは気持ちを落ち着かせます。

 

いかがですか?

カオナシの変容は、子育てのヒントがたくさん詰まったものであることに気づきがありました。



千と千尋の神隠し|カオナシの正体について考察まとめ

カオナシの正体は"人間の尽きない欲"や、誰しもが持っている"人間の弱い部分"を擬人化したキャラクター。
その後のカオナシは、銭婆のもとで自分の役割を見つけ"主体的"に過ごしていくことでしょう。
そしてきっと、そのことが"イキイキと暮らす"ということなのでしょうね。
このことが、これからを生きる子どもたちに向けた宮崎駿監督からのメッセージということも意味深いことだと感じています。
子どもに限らず、主体性という部分で欠けている大人もたくさんいるのが現実です。
"自分を俯瞰する視点"が人生を歩んでいく上で大切なことだとカオナシから学びました。

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