『もののけ姫』には数多くのイノシシが登場しますよね。
あれは、タタリ神となった、乙事主(おっことぬし)です!
作品序盤から、タタリ神になったナゴの守(なごのかみ)がエミシの村を襲うシーンはすごい迫力!
あっという間に『もののけ姫』の世界観に引き込まれていきますよね。
今回は『もののけ姫』に登場するイノシシたち、乙事主(おっことぬしさま)について考察してみたいと思います。
『もののけ姫』 イノシシの神 乙事主(おっことぬし)がタタリ神になったのはなぜ?
冒頭にアシタカの故郷であるエミシの村を襲ったのは"ナゴの守"と言う猪神でした。
エボシがナゴの守を撃った鉄のつぶてがかれに深い傷を与え、死への恐怖と人間への怒り、恨みを募らせ朽ち果ててゆきました。
一方、乙事主(おっことぬし)はナゴの守よりもさらに齢を重ねており、猪神の中でも格別の存在の長老でした。
かれまでもが、なぜタタリ神になってしまったのでしょうか。
かれは遠い鎮西の国からナゴの守の死の知らせを聞いて駆けつけて来ました。
エボシからの挑発を受け、人間達に正面から突進して戦いながらかなりの傷を負い弱っていたところ、猪の戦士達の皮を被って姿をごまかした、ジバシリという人間の特殊部隊に騙されてしまったのです。
齢を重ねた誇り高き長老であるにもかかわらず、死んだ猪が黄泉の国から戻って来たと勘違いし、混乱の渦に飲み込まれてしまいました。
遂にはジバシリに囲まれ、怒りと恨みに身を焦がし自我を失い錯乱状態になったため、タタリ神になってしまったのです。
サンを育てた山犬のモロは、乙事主(おっことぬし)と同じく人間への怒りの心を持っていました。
しかし、自分の死を受け止めていたため、命尽きるまでタタリ神に侵されることはありませんでした。
これは、怒りや憤りの感情を持っていても、「心」を忘れてはいけないというメッセージなのではないでしょうか。
『もののけ姫』イノシシ同士がを泥を塗る意味は?泥の模様の意味とは?
エボシがシシ神の頭を取ろうとイノシシ達を挑発したとき、イノシシ同士は白い泥を塗りあっていました。
模様のようにも見えるこの泥は一体何なのでしょう。
イノシシは元来、体の表面に付いているダニや寄生虫を落とすために泥を浴びる習性があります。
その泥を塗る場所を沼田場(ぬたば)と言います。
日本では、昔から沼田場には山の神がいると考えられてきました。
イノシシ同士が泥を塗りあっていたシーン以降、サンや乙事主がこのイノシシたちを「戦士たち」と呼んでいます。
これらのことから、今から向かう戦(いくさ)への勝利と、無事を願うための化粧だと考えられます。
戦闘服に身を包んで戦いに行くような、とても勇ましい姿ですよね。
『もののけ姫』イノシシの神、乙事主の声を担当した声優さんは?
乙事主(おっことぬしさま)の声を担当されたのはどなたなのでしょう。
それは森繁久彌(もりしげ ひさや)さんという昭和から平成にかけて大活躍された、日本を代表する俳優さんです。
紫綬褒章、文化功労賞、また大衆芸能分野では初の文化勲章を受賞されました。
乙事主の声を演じたのは森繁久彌さんです。
森繁さんは宮崎駿監督がアニメーション業界を志すきっかけとなった「白蛇伝」で男性の登場人物全てを演じており、宮崎監督にとっては感慨深かったそうです。#もののけ姫 pic.twitter.com/D0JaAkoYbv— キャッスル@ジブリフリーク (@castle_gtm) August 13, 2021
出演した作品を挙げればキリがありませんが、吉田茂元首相を吉田茂そっくりに演じた『小説吉田学校』、宮本輝の小説を映画化した『流転の海』では、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞されています。
また演技だけではなくシンガーソングライターとしても活躍されていて、加藤登紀子さんによってカバーされたことでも有名な『知床旅情』の作詞作曲もなさっている「素晴らしい才能」という言葉では言い表せないほどのご活躍された方です。
彼ほどの方でないと乙事主ほどの重厚な役どころは演じられないということなのかもしれませんね。
『もののけ姫』イノシシたち(乙事主)の印象的なセリフは?
イノシシ達が残した印象的なセリフと言えば、何を思い浮かべますか?
いっしょに振り返ってみましょう!
冒頭で、タタリ神になってしまったナゴの守が最後に残したセリフです。
かれは人間への憎悪と攻撃された痛みや苦しみで、周りを巻き込み全て飲み込んで破壊しようとしてしまいます。
正面から正々堂々と戦う誇り高きイノシシとは思えない言葉で胸が痛みます。
乙事主がジバシリをイノシシの戦士たちと勘違いし、シシ神の元へ急ごうとするシーンです。
猩々(しょうじょう)や野ネズミたちも気づいていたジバシリの異様さに、乙事主ほどの神が騙されてしまったときの乙事主のセリフです。
その後すぐにジバシリに囲まれ、乙事主は錯乱状態になりタタリ神になってしまいました。
そして、サンが止める言葉も耳に入らなくなってしまうほど絶望に追い詰められていったのです。
楽観的な思考を求めて、自分に迫り来る死を受け入れられなくなっていたのかもしれませんね。
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『もののけ姫』乙事主(おっことぬし)についてのまとめ
作品中に登場したさまざまなイノシシ達について、いかがでしたでしょうか。
この作品においてイノシシは、実直で強謙であるにも関わらず、悲しい運命を辿ってしまう存在です。
誇り高きイノシシ達が、心を失わずそしてタタリ神にならずに戦うにはどうしたらよかったのでしょうか。
やはり、戦という対立関係の上には自分の力ではコントロールできない憎しみと怒りが噴出し、罪のないものにまで被害をもたらしてしまう悲劇を、避けることは難しいのかもしれません。
シシ神に頭を返したあとの森で、人間を含めた全ての生き物が対立せずに共に歩んで行くことを祈ってやみません。
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