映画『アーヤと魔女』が新型コロナウイルス感染拡大を受けて、4月29日(木・祝日)の劇場公開を目前にして延期となりましたね。
(追記:延期されていた公開日が8月27日(金)に決定しました!)
我が家の子どもにとって映画『アーヤと魔女』は劇場で観るはじめてのジブリ作品なのです。とっても楽しみにしていたので延期の報道を聞いてガックシの様子。
そんな子どもに「大丈夫!原作本があるよ」と声をかけ二人で原作を読みました。そして昨年末にNHKで放映されたアニメと原作の違いなんかを語り合い、おうち時間を過ごしています。
今回は映画の公開前までに、子どもと一緒に読んでおきたいと思って準備していた、児童文学小説「アーヤと魔女」についての感想や宮崎吾朗監督の魅力などをお伝えできればと思います。
アーヤと魔女|原作者ダイアナウィンジョーンズはファンタジーの女王
映画『アーヤと魔女』の原作者は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(Diana Wynne Jones)
イギリスのファンタジー作家で、子ども向けの独創的なファンタジー小説が多いことで有名です。
代表作『魔法使いハウルと火の悪魔』は、2004年スタジオジブリにより『ハウルの動く城』として映画化されました。
この物語はシリーズ化されているので、映画化された第1巻以降の展開を知ることも嬉しいですね。
『ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔』1986年
『ハウルの動く城2 アブダラと空飛ぶ絨毯』1990年
『ハウルの動く城3 チャーメインと魔法の家』2008年
その他には『大魔法使いクレストマンシーシリーズ』や『デイルマーク王国史シリーズ』など、
子どもがワクワクしそうな物語がたくさん!根強いファンを増やしているのでしょうね。
幼い時から古典文学に親しんでいた彼女は、主人公の多くが男性であることに歯がゆさを覚えていました。そしてオックスフォード大学卒業と同時に結婚、3児の母となりこの頃からファンタジーを書き始めたのです。
3人の子どもたちと一緒の時間を過ごすことで、彼女の想像力がさらに掻き立てられたのでしょう!それが素晴らしい作品となり、私たちもその名作に触れることができるなんて、なんとも嬉しい限りです。
そして彼女は、約2年間の闘病生活を続け肺がんで76歳の生涯を閉じたのです。(1934年8月16日-2011年3月26日)
ちなみに、彼女はジブリファンだったようですよ!
映画『ハウルの動く城』を観てもわかりますが、彼女の描く物語は、各キャラクターの設定や随所に見られる伏線など、とても深く描かれているという印象を受けます。そんな彼女が、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』を代表とするスタジオジブリ作品を好むのも納得です。
そんなエピソードを聞くと、今やスタジオジブリはディズニーやピクサーに匹敵するような"世界のジブリ"となっているんだなぁ、と嬉しく思うのです。
「アーヤと魔女」は未完成の小説だった!
小説「アーヤと魔女」は、彼女が書きかけのままにしていたもので、彼女が亡くなる前に「そのまま出版してもいい」語っていたことから発表された作品でした。
このことについて、宮崎吾朗監督は11月30日東京・スタジオジブリで行われた合同取材会見でのインタビューで次のように話をしています。
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は物語がよく練られて詰まっているものが多いですが、『アーヤと魔女』は隙間が多いなという印象でした」
「後で知ったのですが、この作品はもともと描きかけの作品で、後から手を入れようと置いていたものだったらしいんですよ。それを彼女が亡くなる前にそのまま出版したのが『アーヤと魔女』。なので世に出たのは最近のことですが、書いたのはけっこう昔のことだったそうですね」
私も原作本を読みましたが、小学校低学年の子どもが読んでちょうどいいくらいの文章量だなぁ、との印象を受けていました。
それにこの「アーヤと魔女」は、挿絵がとても多いのです。
見開きに一つは挿絵が入っていて、子どもが手にとって読みたくなるような作品になっています。
原作本の挿絵は『アーヤと魔女』の世界観がたっぷり!
小説「アーヤと魔女」の挿絵は、数々の児童文学作品の表紙や挿絵を描いている挿絵作家佐竹美保(さたけ みほ)さんが担当しています。
佐竹さんは「魔法使いハウルと火の悪魔」や「魔女の宅急便」など、スタジオジブリ作品となった原作本も多く手がけています。
そして、佐竹さんのことをダイアナ・ウィン・ジョーンズが生前「世界中の挿絵画家の中で一番好き」と語っていたとのこと。
そのほかにもダイアナ・ウィン・ジョーンズの「クレストマンシーシリーズ」をはじめとした作品の表紙や挿絵も担当しています。
挿絵作家さんをきっかけにして、たくさんの児童文学に触れるというのも、また楽しいおはなしとの出会いになっていいですね!
『アーヤと魔女』宮崎吾朗監督による原作にはナイ設定って?
映画『アーヤと魔女』では、アーヤのお母さんがロックバンド活動をしていますが、これは原作にはない設定で、このことについて宮崎吾朗監督は次のように話しています。
「ロックバンドの設定は、舞台・時代設定から思い付きました。まず作品の舞台はイギリスで、あとはアーヤが家に閉じ込められるわけですが、スマートフォンや携帯電話があると外と連絡が取れちゃうので(笑)、時代は1990年くらいにしようと考えました。すると1990年に10歳になった女の子が生まれたのは1980年で、そのお母さんの若かりし頃は1970年代、その時代といえば、僕が好きなイギリスのロックが華やかだった頃だな」
小説「アーヤと魔女」では、アーヤの母親についての描写がなく、孤児院にアーヤを届けた際に添えた手紙と"12人の魔女に追われている"という記述だけです。(挿絵では、ほうきに乗ったアーヤの母親と思われる女性が、12人のほうきに乗った魔女に追われている様子が描かれています。)
そこで宮崎吾朗監督は、原作の話を膨らませるため、音楽を取り入れたんですね。
実は、宮崎吾朗監督って、音楽に造詣が深い方なんですよ。
原作の話を膨らませるためにバンド活動やノリのいい曲を取り入れるという描き方に、あらためて宮崎吾朗監督のセンスの良さを感じました。
ちなみに、アメニーターでもあるお父様、宮崎駿監督は、音楽に関することは高畑勲監督に絶大な信頼を寄せていたようです。
原作を読むと、さまざまな視点で映画を観ることができたり、監督をはじめとした作り手側の思いが伝わってくるなど、より深く作品を楽しめることに気がつくことができて嬉しいです。
アーヤと魔女の原作本(英語)の名前はハサミムシ!?
原作「アーヤと魔女」の英語版の題名は「Earwig and the Witch」です。
カタカナ英語にすると「イアウィグ アンド ザ ウィッチ」といった感じでしょうか。
邦題と比べると「Earwig」がアーヤということになりますね。「Witch」は魔女です。
しかしこの「Earwig」は、ハサミムシという意味なのですが、そのほか"盗み聞き"や"入れ知恵、取り入ろうとする"という意味も含まれます。
映画『アーヤと魔女』では、孤児院の園長先生が、アーヤの母親が書いた"この子の名前はアヤツルです"というメモの記述に対して"人を操るみたい(で嫌)"と感じて、"アーヤツール"と名付けてしまいました。
原作でも同じように、園長先生がメモを読んで"魔女なんて!(この世にいるわけがない)"と怒っています。
気がつきましたか?
この「Earwig」は、アーヤの母親とマンドレーク、ベラヤーガ3人のグループ名です。
このあたりなんだか伏線がありそうな予感。
ちなみに、原作でもアニメでも、アーヤは自分の本名を知らず"(名)アーヤ(姓)ツール"だと思っています。
おもしろいですね。アーヤは自分の本名を知る機会が訪れるのでしょうか?
昨年末NHKで放映された『アーヤと魔女』を観た人たちからは続編が観たいとの声があがっています。
劇場公開が延期となったことで、ゆっくり原作を読む機会が出来て良かった!と感じています。
ぜひ「アーヤと魔女」を読んで、劇場版『アーヤと魔女』の展開についてアレコレと思いを巡らせてみませんか?
【追記】公開日に合わせて『劇場版 アーヤと魔女』を楽しんできました!
こちらの記事もぜひ!
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