スタジオジブリ最新作となる劇場版『アーヤと魔女』はジブリ初のフル3DCG作品ということで大変話題になっています。
その反面、ジブリがなぜ3DCG?ジブリっぽくないんだけど・・・なんて声も聞かれます。
ジブリは手描きのアニメだからいい!とか手書きを貫いてほしかった!などのつぶやきも見受けられます。
では、今回の『アーヤと魔女』はなぜフル3DCGで製作されたのでしょうか?
そこには、ジブリらしい考え方がありました。
今回は、『アーヤと魔女』がなぜ3DCG作品なのかについて、作品の魅力とともにお届けします。
『アーヤと魔女』はなぜ3DCG?じゃあ、ジブリっぽさってなに?
ネット上ではジブリが3DCGの作品を発表したことで"ジブリっぽくない"や、ときには"ジブリじゃない"という声が聞かれます。
私としてはこの意見が意外だったので、逆にジブリっぽさってなんだろう?と考えてみました。
それはやはり、メッセージ性を最初にあげたいですね。
宮崎駿監督がアニメーションでいつも子どもたちに伝えたいことは
"この世は生きるに値する"
『アーヤと魔女』のアーヤはまさしく、このメッセージそのものだと思います。
『アーヤと魔女』のあらすじについては、こちらをご覧ください。
ジブリっぽくないと言われるのは、どうやらビジュアル的なもので、ジブリはやっぱり2Dがいい!ということなんですね。
このようなご意見は、私としては嬉しい限りです。
それだけ、これまでのみなさまの人生と共にジブリがあったということですからね。
子どもが観ているアニメーションでも、海外のものはおおよそ3DCGになっていますよね。
我が家でもかなりハマった"アナ雪"は3DCGです。
日本国内のアニメーションをみても、劇場版の"ドラえもん"が3DCGとなるなど、今後主流になってくるのかもしれません。
しかしファンとしては"ジブリは2Dのままで"と感じてしまうのは正直なところだと思います。
『アーヤと魔女』のエンドロールは必見!ジブリらしい2Dが観れる!
2020年12月にNHKにて放映された『アーヤと魔女』をご覧になった方は、既にご存知かと思いますが、エンドロールで"アーヤのその後"が描かれています。
エンドロールに出てきたこの絵でアーヤと魔女2D特別編もお願いします#アーヤと魔女 pic.twitter.com/1T1M4ZdwU6
— ぷりれろ社長 (@purirero) December 30, 2020
このエンドロールは"ジブリらしい"とのことで、Twitterでも好評の声がたくさんありました。
私は、2Dのアーヤの表情を観ていると、3DCGで表現されたアーヤの表情はとてもリアルに感じ、逆にジブリの3DCGの技術の高さにびっくりしました。
一緒に観ていた子どもも"面白かった"と大絶賛!
ぜひ劇場版でも、エンドロールは必見です!
『アーヤと魔女』の"ジブリっぽさ"は自然の描き方
宮崎吾朗監督はメディアのインタビューで、ジブリっぽさとは"自然は自然のものとして描く"ことがひとつと語っています。
ジブリでは、高畑勲監督も宮崎駿監督も"自然の表現"について追求されてきました。そのジブリの原点とも言える思いが『アーヤと魔女』にも、しっかりと引き継がれています。
劇中でみられる草木や空などはとても美しく、アーヤの表情以外に自然の描写にも注目です!
では、3DCG作品を発表したスタジオジブリは、これからどこに向かっていくのでしょう?
『アーヤと魔女』なぜ3DCG?宮崎吾朗監督の新たな挑戦
実は、宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』がCG初挑戦ではないのです。
ご自身が監督を務めた『山賊の娘ローニャ』(NHK 2014年)はCGで制作されました。
この作品をご覧になった方は「山賊の娘ローニャは3DCGじゃないのでは?」と感じたのではないでしょうか。
実はこの『山賊の娘ローニャ』はセルルックアニメーションという手法で制作されています。
セルルックとは、3DCGで制作したキャラクターをセルに落とし込むといった技法。
日本人が好むと言われている"セルアニメ"のように見せる技術です。
この時の経験を生かし『アーヤと魔女』も3DCGで制作するという方向性が決まりました。
そして、おおよその予想では『山賊の娘ローニャ』を踏襲し"セルルック"が採用されると思っていたようです。
ところが宮崎吾朗監督が決断したのは"フル3DCG"でした。
宮崎吾朗監督の"常に新しいものに挑戦する"というスタンスが、私はいつも魅力だと感じています。
宮崎吾朗監督が『アーヤと魔女』をフル3DCG作品でいく!と決めた経緯についてはこちら
『アーヤと魔女』なぜ3DCG?宮崎吾朗監督の手応え
宮崎吾朗監督は『山賊の娘ローニャ』で初めてCGに挑み『アーヤと魔女』でフル3DCG作品として昇華させました。
そこでどんな手応えを感じたのでしょうか?
先述のインタビューでは、3DCGを経験してみて"CGはキャラクターの地味な芝居に向いている"それが意外だったと語っています。
手描きだと表現が難しいシーンも3DCGでは細かなキャラクターの表情や動きについても柔軟に対応できるということなんですね。
この手応えは、今後のスタジオジブリの作品にどのように表現されるのかと思うと、とても嬉しいですね。
宮崎吾朗監督の人間としての魅力
『アーヤと魔女』が3DCG作品となった過程には、世界中から集められたスタッフの力なくしてはできなかったと宮崎吾朗監督は語っています。
その中でも、先述の『山賊の娘ローニャ』でアニメーションディレクターを務めたタン・セリ氏の存在は宮崎吾朗監督にとって大きかったようです。
マレーシア出身のタン・セリ氏の声がけにより『アーヤと魔女』の制作には、さまざまな国から優秀な人材が集められました。
私は、制作当時スタッフが世界中に散らばっている状況で作業が進められる中、監督として求められるのはコミュニケーションをはじめとした"チームをまとめる力"ではないかと感じました。
このことについては、鈴木敏夫プロデューサーも"彼(宮崎吾朗監督)は、スタッフをよくまとめていた"とインタビューで語っていたので、そこにはやはり宮崎吾朗監督の人間力あってこそなんだと思います。
『アーヤと魔女』なぜ3DCG?ロックが作品に動きをプラス
『アーヤと魔女』には原作があり、そこにはアーヤの母親についての描写はアーヤを預ける時に同封した手紙だけなのです。
『アーヤと魔女』の原作については、こちらをご覧ください。
劇中では、アーヤの母親はロックバンドのボーカルで、バイクに乗り"カッコいい"の代名詞のようなお母さん!
このキャラクターは宮崎吾朗監督によって作り出されたものなのです。
では、なぜロック?かというと・・・
宮崎吾朗監督がよく聴いていたからということのようです。(やっぱりセンスいい!と勝手に感動)
原作にはないアーヤの母親の描写
原作では描かれていない
アーヤの母親の設定について、まずは舞台や年代設定から決められました。
魔女の家に閉じ込められてしまうアーヤが、もし携帯電話を持っていたらきっと外部に連絡をしてしまうだろうという考えから、アーヤの年代を1980年代としました。
すると、その母親は1970年代にはイギリスのロックが華々しい時代ということが経緯のようです。
もっとも、宮崎吾朗監督は"音楽を主体的な形でやっているキャラクター"をやってみたかった、という気持ちもあったようです。
まさしく若かりし頃にやっていたバンド仲間との過去なんて、いいですよね。
2020年12月にNHKで放映されたときに、我が家の子どもがハマったのは"音楽"でした。
かつてロックバンドで活動していたという設定は、3DCGの表現に動きを加えるという視点からも、とてもプラスに働いていると感じています。
ちなみに、マンドレークやベラヤーガのCGは、実際に演奏している映像を元に作られているんですよ!
ベラヤーガのドラムを叩くシーンがとってもカッコいいのは、シシド・カフカさんだったからなんですね〜
『アーヤと魔女』はなぜ3DCG?まとめ
いかがでしたか?
宮崎吾朗監督がフル3DCG作品を制作・発表するまでには"常に新しいものに挑戦する"という決意やさまざまな困難、気づきそして手応えがあったことがわかりました。
また今後、スタジオジブリは3DCGでも手描きでも"アニメーションで伝えたいこと"は一貫して変わらないことも改めてわかりました。
『アーヤと魔女』は、これからずっと子どもたちに"大切なメッセージ"を伝える作品になることを実感しています。
ぜひ、劇場で子どもと"ジブリ"を楽しみましょう!
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