『魔女の宅急便』キキの性格は"活発な女の子"ってイメージですよね。
でも、喜怒哀楽が激しいからか"性格が悪い"との声もあるキャラクターです。
ネットでつぶやかれるキキの性格は「イイ」と「悪い」どうして正反対になるのでしょう?
それはストーリーの中にさまざまなヒントがあるようです。
今回は、あらすじを追いながらキキの性格について考察してみたいと思います。
『魔女の宅急便』キキ|旅立ちの時は明るく前向きな子
キキは13歳です。
13歳になった満月の夜に"ひとり立ち"するという魔女の掟のことをずっと考えていたのでしょう。
オープニングでのキキの表情に"これからの自分"を深く考えている様子がうかがえます。
物語はラジオから流れる天気予報を聴いてキキが「今晩に決めた!」というシーンから始まります。
お父さん(オキノさん)とのキャンプの約束を蹴ってまで、旅立ちの日を決めました。
旅立ちを決めた娘とお母さん(コキリさん)の会話も印象的なシーンです。
「笑顔を大切に」そして「心はお見せできなくて残念」なんて会話、とっても素敵な母娘ですよね!
私はこのシーンを初めて見たとき、親として娘と交わすこの会話を羨ましく思ったものです。
そして、旅立つ日には友達がたくさん見送りに来てくれました。みんな女の子ばかりです。
これまでのキキと友達のかかわり方、楽しかったこれまでの様子が伝わるような会話で見送ります。
いかがですか?
ここまでは、明るく活発で"気立ての良い子"という表現がピッタリと感じるシーンばかりです。
『魔女の宅急便』キキへのアドバイザー?先輩魔女
「GO!GO!キーキ」と友達の声援を受けて飛び立ってからは、さらにキキの"前向きな考え方"が光るシーンがあります。
先輩魔女に出逢ったこと。
ラジオの音楽を「止めてくださらない」「静かに飛びたいの」とまで言われてしまいます。
彼女は「あともう少しで修行が終わる」というセリフから、およそ1年修業をしているということになりますね。
キキは、先輩魔女から"自分の特技は何か?"と聞かれ、言葉に詰まってしまいます。
これはキキにとって、とても良い気づきだったでしょう。
◉住む街を決める
◉その街で仕事をする
13歳としてはとても大きな決断と行動力がないとできないのではないでしょうか?
魔女の掟とはいえ、13歳でひとり立ちとはなかなか厳しい世界だと感じます。
しかし持ち前の明るさと機転のきいた判断力で、ようやくコリコの街までたどり着くのです。
偶然出会うように思える先輩魔女ですが、キキにとっては大きな出会いだったでしょうね。
キキは旅たちにあたり、しっかりとイメージを持っていました。
海の見える街に住みたい
とても良いイメージですよね。
相棒のジジは「なんだ、ただの水たまりじゃないか」と語っていますが、そのキキとジジの会話が楽しく、可愛らしいシーンのひとつです。
『魔女の宅急便』キキが見つけた住みたい街 コリコ
いよいよ住みたい街が見つかりました。コリコという街です。
住む街を決めるにあたっては"魔女が住んでいない街"という条件があり、時計塔にいた老人に「この街に魔女はいますか?」と聞いています。
初対面の人にもオドオドモジモジすることなく、ちゃんと聞けている様子にとても親近感が湧きました。
私の勝手なイメージで"魔女"というと何となく声をかけづらい印象を持ってました。
でも、キキの持ち前の明るさが街の人たちにも好印象を与えていたことでしょうね。
原作小説「魔女の宅急便」でも、いきいきとしたキキが描かれています。
『魔女の宅急便』キキ|トンボの登場で性格が悪くなる?
さて、ここまではとても明るく前向きで良い子。
魔女だということ以外は普通の明るい女の子です。
ところが、空を飛ぶことが大好きなトンボと出会うことで、キキの怒りに触れる機会が多くなります。
ほうきで空を飛ぶ魔女にとても興味があったトンボは、グイグイとキキがドン引きするほどの勢いで近づいていきます。
このシーンでキキは初めて怒り出します。
それは"初対面なのにあまりに馴れ馴れしい"ということで怒ったのです。
このシーンで私はキキのお母さんの普段の教育の仕方に感心してしまいました。
初対面の人とは、馴れ馴れしくするものではありません。
それなりの礼儀を持って接しましょう。
とキキのお母さんが教えていたからキキが怒ったと考えると、親としてとても勉強になったシーンです。
そして、この突然怒りだすということが"キキの性格が悪い"とネット上で声が上がる一因のようです。
『魔女の宅急便』ニシンのパイの女の子登場で、怒り出したキキ!
『魔女の宅急便』のシーンでキキが怒り出すシーンといえば、物語の中盤トンボと心が打ち解けていたとき"ニシンのパイの女の子"が登場したときです。
この"ニシンとかぼちゃのつつみ焼き"を届けたシーンは、この作品の一番印象に残るシーンではないでしょうか。
ちなみに宮崎駿監督は、この女の子が"この嫌いなパイが届いて本当に迷惑している"という雰囲気が出ているのでとても気に入っていると語っています。
このストーリーの意図には"働くってそんな楽しいことばかりじゃない"というメッセージが込められています。
これまで優しい両親や仲の良い友達のもと楽しく過ごしてきたキキは、この女の子の行為をストレートに受け止めてしまったんですね。
自分は大変な思いをして届けたのに・・・ということ、そして老婦人と一緒の時間が楽しかったということもさらに孫娘に対しての怒りに変わっていったんでしょうね。
このことについて、のちにキキ自身も振り返っています。
"自分は素直じゃない"と。
私はキキがしっかりと自己分析できていることに凄いなぁと感じました。
素直じゃないと自分で言えることが素直な証拠なんじゃないかと。
徐々に仕事も軌道に乗り、心通わす友達もできていたところなのに、これまで"前向きで明るい"キキがドンドンネガティブ思考になっていくシーンは、観ているこちらも胸が痛くなるほどです。
キキにとってウルスラは、相談できるおねえさんの存在
キキが飛べなくなったことで仕事の方にも影響が出てしまい、気分は落ち込む一方です。
そんなときに登場するのが絵描きの女の子ウルスラです。
彼女はキキにとって"格好の相談相手"であり、様々な経験で心が揺れているキキの気持ちにしっかりと答えてくれています。
そして、その答えもキキに何か行動を起こさせるような考えではなく"時間が解決してくれる"という、13歳ではまだまだ気が付かないような"処世術"を自分のエピソードを交えながら解いてくれています。
この夜の出来事は、やさしくしっかりとキキの心を耕してくれたことでしょう。
ウルスラの絵が表現しているように、ウルスラ自身がキキの魅力に惹かれていったということもありますが、彼女の描いた作品からも、キキは何かを得たのではないでしょうか。
お互いが高め合える関係っていいですよね!
また、人生の先輩としてウルスラに憧れを持ったことでしょう。
こうしてみると"この人すごいなぁ"と思える人に出会うって、とっても大事なことなんですね。
その他にもキキの成長に携わってくれたコリコの街の人たちは、素敵な人たちばかりです。
キキには、モデルとなる人がいる?
ところで、宮崎駿監督が作る作品には、いつもモデルがいるってご存知でしたか?
今回、キキのモデルといわれているのが、鈴木敏夫プロデューサーの娘さんです。
当時は、キキと同じ13歳でした。
宮崎駿監督は、男4人兄弟(ご本人は二男)です。そしてご自身のお子様も男の子ばかり(2人)。
そこで鈴木敏夫プロデューサーと『魔女の宅急便』のテーマを決めるにあたり、娘さんについていろいろとリサーチされたと語っています。
ジブリ作品がリアルなのは、このようなリサーチがあるからなんだと実感したエピソードですね。
その他、映画の舞台となった場所についてはこちらで紹介しています
『魔女の宅急便』キキ まとめ
キキの性格がイイとか悪いと言われることについて、エピソードを辿りながら見てきました。
"13歳で親元を離れて仕事を探す"ってあらためて大変なことだということに気付かされました。
そして、もともと明るくて前向きな考えの女の子が、突然怒り出したり落ち込んだりするということは、これまで経験したことのない出来事に、大きく気持ちが揺れ動くからなんだということも表現されていました。
いつも自分の気持ちに正直なキキ。喜怒哀楽を表現しながらも周りの人を惹きつける魅力をもっているキキ。
最後に語っている「おちこんだりもしたけれど私はげんきです」と両親へ宛てた手紙の内容で、大人への第一歩を踏み出し始めているように感じました。
子どもが楽しめるのはもちろん、大人も思いを深くすることができる作品ですよ。ぜひ!
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