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『レッドタートル ある島の物語』を観ての考察・感想・レビュー

レッドタートルある島の物語
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2016年公開『レッドタートル ある島の物語』をご覧になりましたか?この記事に訪れて下さったということは、おそらくまだ観ていない方ではないでしょうか?

私の率直な感想は、ジブリの"隠れた名作"といっても過言ではないと感じる作品でした。

今回は『レッドタートル ある島の物語』について、考察や感想を交えながらお送りします。




レッドタートル ある島の物語 考察・感想|あらすじ

荒れ狂う夜の海に放り出され波にあらがう男が、溺れそうになりながらもなんとか小舟につかまり急死に一生を得たところから物語が始まります。

男が目を覚ましたときには無人島の海岸に横たわっていました。

男はこの無人島から脱出を試みようと、島にたくさんある竹林の竹を材料にして筏をつくり沖へ出しますが何者かに壊されてしまいます。

しかも、それは何度も。

そして何度目かの筏を沖へ出したとき、男は赤い大きなウミガメに出会います。

その後、突然女性が現れたことで男が抱いていた感情に変化が訪れます。

この映画は、キャッチコピー『どこから来たのか どこへいくのか いのちは?』にあるように、さまざまな問いを投げかけられる作品です。

また、自然の恐怖や恩恵そして"人と自然はいつも共にある"という気づきが得られる作品でもあるように感じます。




レッドタートル ある島の物語 考察・感想|監督はオランダ人

監督は、マイケル・デュドク・ドゥ・ビット(Michael Dudok de Wit)さん。

この物語の原作者でもあるビット監督は、1953年オランダ生まれ。

スイスとイギリスの美術大学を卒業後、バルセロナで1年間アニメーターとして働いたのち、1980年からロンドンでテレビCMや映画監督、アメニーション制作を行なっていました。

ディスーニー作品で1991年の『美女と野獣』や2000年の『ファンタジア2000』などに参画した経歴もお持ちです。

〜おもな短編アニメーション監督作品〜

『Tom Sweep』(1992年/3分)
『お坊さんと魚』(1994年/7分)[アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート]
『岸辺のふたり』(2000年/8分)[アカデミー賞短編アニメーション賞受賞]

そして、『レッドタートル ある島の物語』(2016年/80分)では、カンヌ国際映画祭 ある視点部門特別賞受賞、アニー賞 長編インディペンデント作品賞を受賞しています。



レッドタートル ある島の物語 考察・感想|ジブリが一目惚れした監督!?

スタジオジブリが海外のアニメーション作家をプロデュースするきっかけになった作品が『岸辺のふたり』(Father and Daughter)です。

鈴木敏夫プロデューサーは後のインタビューで「(ビット監督に)一目惚れした」と語っています。

当初、ビット監督はスタジオジブリからのオファーに難色を示したそうです。

これまで1人で短編のアニメーション制作を行なってきたビット監督のもとへ、長編アニメーション作品の代名詞といってもいいスタジオジブリから声がけがあったのですからご本人もビックリしたことでしょう。

『岸辺のふたり』を観た鈴木敏夫プロデューサーが「彼(ビット監督)の長編作品を観てみたい」との気持ちに駆られ依頼しました。

ビット監督は"尊敬している高畑勲監督から長編映画の制作全般について助言を受けられるなら"と条件を出して了承。そして一時スタジオジブリの近くに居を構え、高畑勲監督やスタジオジブリのスタッフとシナリオや絵コンテまた効果音や音楽について打ち合わせを何度も行い、その後フランスに戻って作品を完成させました。

企画から数えると足掛け10年目で完成した作品です。

これまで1人でアニメーション制作を行なってきたビット監督にとって、ヨーロッパ中から集めたスタッフとともに長編アニメーションを制作するということは、並大抵のことではなかったと推測しますが、ビット監督ご本人は、アーティスティック・プロデューサーとしてこの作品に参加した高畑勲監督との時間は何にも変え難い充実した時間であったと語っています。



レッドタートル ある島の物語 考察・感想|80分間セリフがない作品

『レッドタートル ある島の物語』はセリフがない作品です。

これってビックリしませんか?そもそもセリフなしで伝わるの?と感じるかもしれません。

 

ビット監督はこれまで、8分の短編作品『岸辺のふたり』でセリフがない作品を制作しています。

しかし、80分もの長編となる『レッドタートル ある島の物語』にセリフがないのは観客に伝わらないのでは、と制作当初は考えていたようです。

しかし、鈴木敏夫プロデューサーの意向によって"セリフはなし"となりました。

男の叫び声や呼吸の音などの表現はありますが、セリフはなくストーリーが展開されます。

このことについて、鈴木敏夫プロデューサーはビット監督の"絵の上手さ"を挙げています。

"絵が上手ければ伝わる"と。

さらにインタビューで次のようにも語っています。

---最近の日本映画の傾向として説明しなくていいことを説明している。昔の映画は説明なんてない「自分で考えろ」ですよ、自分で考えるから楽しくなるんですよ!---

深いですね。

逆に"説明過多"な作品が多いということは"自分で考えなくなっているくなっている"ことにも気づきがありました。

よく、映画を観ての感想で「意味がわからない」などとの書き込みを見ることも多くなったように感じます。

映画をこよなく愛する鈴木敏夫プロデューサーの憂いがとても伝わっていきますね。



レッドタートル ある島の物語|考察・感想

鈴木敏夫プロデューサーが語るように、この『レッドタートル ある島の物語』は、自分で考える作品なのです。

そして、ビット監督の"絵の力"の魅力にどんどん惹き込まれていく作品です。

とにかく自然の表現がとても美しい作品。

ビット監督は完成披露時の高畑勲監督との対談で、観客に対してどのように本作品を観てほしいか?の問いに対し次のように語っています。

---音楽を聴くように深く物事を考えず、作品に身を委ねて観て欲しい---

この作品に、観る側の"問い"は必要ない!と私は感じました。

そして、ビット監督が語っているように、映画に身を委ねてストーリーを追っていきました

すると、どんな長い映画を観ても得られなかった感情が残ることに気がつきました。

その感情を一言で表すのは難しいのですが"自然の中で生かされている自分"に気づいたり"人間やいのちとはどのようにあるべきか"そして"家族を持つということ"などなど、さまざまなことを考えるきっかけをもらったように感じました。



レッドタートル ある島の物語 考察・感想|絵本で作品に触れる楽しみ

『レッドタートル ある島の物語』には絵本があります。

「セリフがない映画なのに絵本?」と感じる方もいるでしょう。

映像作品で心を掴まれた私は早速購入してしまいました(笑)。

映画を観ても感じていたことですが、絵本を読んでも"ジブリらしい作品"だと再認識させられる内容で、

映像作品をご覧になった方には、ぜひ読んでみてほしいと感じさせるものでした。

サイレント映画という形態上、子どもにはまだまだ理解が難しい作品ですが、成長に合わせ折に触れて絵本と映像を一緒に見てお互いの感想を語り合うなど、ずっと大切にしたい作品に出会えたことをとても嬉しく思っています。

観る側のその時の心のあり様によって感じることが変化するジブリ作品。

ぜひ、この"静かなジブリ"も一度をご覧になってみてはいかがですか?



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