『おもひでぽろぽろ』のあらすじを紹介!ネタバレ・感想も!

おもひでぽろぽろ
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映画『おもひでぽろぽろ』ってもう観ましたか?

タエ子(27歳)が"小学5年生の自分"と一緒に旅に出る物語。山形の風景や紅花農家の描写がとってもキレイな映画です。

1991年に公開された高畑勲監督、宮崎駿プロデュース作品『おもひでぽろぽろ』は、同名の漫画を原作としてスタジオジブリが制作した劇場用長編アニメーション映画です。そして、日本アカデミー賞話題賞を受賞しています。

東京でOLをしている27歳の女性が、小学5年生の頃、自分に起きた出来事を思い出しながらストーリーは展開されます。

映画のキャッチフレーズは『私はワタシと旅に出る』(糸井重里)。

27歳の「私」が小学5年生の「ワタシ」を連れて"これまでの自分の人生を振り返りながら、これからの自分を探しに行く旅"に出かけます。

今回は『おもひでぽろぽろ』のあらすじや魅力についてお伝えします。




『おもひでぽろぽろ』あらすじ|田舎へのあこがれ

1982年の夏、主人公である27歳のOL岡島タエ子(おかじま たえこ)が、職場で10日間の休暇を上司に申請するシーンから物語が始まります。

 

休暇を取ったのは、姉の嫁ぎ先である山形へ出かけるためで、今回が2回目。

紅花摘みなど農家の仕事を手伝うことが目的で、到着したらすぐ作業できるようにと、紅花の収穫時に合わせて夜行列車で向かいます。

生まれも育ちも東京であるタエ子は幼い頃から"田舎"に憧れを持っていました。

そして、夜行列車で車窓を見ながら、ふと16年前の1966年(タエ子小学5年生)当時のさまざまな出来事を思い出していきます。

"田舎"がないことで、夏休みの朝に参加するラジオ体操はとうとう自分一人、そんな"自分には田舎がない"ことをコンプレックスと感じているタエ子でした。

ラジオ体操終了後に押印してもらえるカードとタエ子の浮かない表情をみていると、カードが毎日ハンコで埋まっていく様子が、なんだかこちらまで物悲しく感じてしまいます。



『おもひでぽろぽろ』あらすじ|小学5年生のときの思い出

『おもひでぽろぽろ』あらすじ|次姉とのシーン

小学5年生のタエ子には二人の姉がいました。1966年当時で美大1年生のナナ子と、高校2年生のヤエ子です。タエ子からみると年の離れたお姉さんなので、喧嘩はしないのかな?なんて思いながら観ていましたが、回想シーンでは、次姉のヤエ子とのエピソードが多く、中でもヤエ子のエナメルバッグをタエ子に貸す貸さないという、姉妹にありがちなストーリも描かれています。

また、算数が苦手なタエ子のテスト結果をみて、母親が宿題を見てあげるようヤエ子に頼むシーンがあります。散々なテスト結果を見た時のヤエ子と母親の会話はとても興味深いものになっており、タエ子の記憶に残るのも無理はないな、と感じるシーンです。

分数の計算についてなかなか理解しようとしないタエ子は「分数を分数で割るという考え方がわからない」という疑問をヤエ子にぶつけますが、その質問に答えられないヤエ子も、また観ていて面白いものがあります。

『おもひでぽろぽろ』あらすじ|初恋のおとずれ

ある日、となりのクラスの広田秀二という男子が「タエ子のことを好きと言っている」と、男子のクラスの女子がタエ子に伝えに来ます。その広田君を知らないタエ子は、自分の知らぬ間に好意を寄せてくれているという初めての体験に、どうして良いのかわからず、戸惑う心情をリアルに描いています。

お互いを意識するようになるものの、向き合って話すこともできないタエ子と広田君。夕日がきれいな帰り道でのシーンは、観ているこちらもドキドキする場面です。

『おもひでぽろぽろ』あらすじ|生理

小学5年生で印象的なこととして"生理についての授業"を受けたことをタエ子は思い出します。授業後のクラスメート同士の会話もリアルで、このことについて男子には"秘密"と考えていた彼女たち。

1966年(昭和41年)当時は劇中にも登場しますが、男子がスカートめくりをするような年代です。また女子をからかう男子の描写もとてもリアルに描かれています。そんな彼女たちにとって、すでに小学4年生で初潮をむかえていた同じクラスのリエの男子に対する考え方や行動は、タエ子たちにとっては衝撃的なものに写っていたことでしょう。

風邪をひいてしまい運動なんてできる状況ではないタエ子が、体育の授業を休まずに頑張ろうとするシーンは、とても微笑ましく感じます。


『おもひでぽろぽろ』あらすじ|トシオとの関係

夜行列車で朝方到着するタエ子を、車で高瀬駅まで迎えにきていたのがトシオです。彼はタエ子の長姉であるナナ子の夫の又従兄弟で、サラリーマンを辞め有機農法の農業を目指している25歳。

トシオは、以前タエ子が山形を訪れた際に、タエ子の存在を知っていましたが、タエ子にその記憶はなく、滞在先であるナナ子の夫の親戚宅へ向かうまでの車中で、さまざまな会話をして二人は打ち解けていきます。

二人の間でかわされる会話はさりげないものですが、そのひとつひとつがリアルな描写に繋がっていて、車という密閉された"二人だけの空間"の空気や匂いが、こちらにも伝わってきそうなシーンばかりです。

タエ子は、トシオが幼い頃嫌いだった家業の農業を好きになった経緯や「今は親父を尊敬している」という気持ちを聞くことで自分にはない感覚だと新鮮に感じたことでしょう。

そして、タエ子が好きな"田舎の景色"は人と自然が共存していくために人が手を加えていったものだ、というトシオの話を聞いて"気づき"を得るタエ子が、徐々にトシオに対して心を解放していく様子の描き方もこの映画の魅力だと思います。

 

『おもひでぽろぽろ』あらすじ|ばっちゃんからの言葉で気づくタエ子

山形での滞在最終日にタエ子は、ばっちゃんから思いがけない言葉をかけられます。

タエ子はその言葉にいたたまれず家を飛び出しますが、それは自分の"田舎"に対する考え方の甘さに気づくからでした。そしてその気持ちが、お世話になった方々に見透かされているようで、とても恥ずかしい気持ちになったのでした。

自分の心を見透かされるという気持ちから、小学5年生のときに転校してきた"あべ君"の思い出がよみがえります。湧き出すように"あべ君"とのエピソードをトシオに話すタエ子の様子は、羞恥心を拭い去りたいとの思いが溢れ出ているようです。

そして"あべ君"に対する自分の考え方がトシオと全く違ったことで、タエ子は大きな気づきを得るのでした。


『おもひでぽろぽろ』あらすじ|リアルな描写が魅力

リアリズムの追求といえば高畑勲監督ですが、この『おもひでぽろぽろ』も"リアル"をキーにして観ていくと、その場のいるような、匂いが伝わってくるようなシーンばかりです。

日の出を迎える頃の紅花を摘むシーンでは、畑のひんやりした空気が伝わってくるようです。

タエ子が乗車する列車も、当時を知る私としては、実際にその列車に乗っているような気分になりました。

そして、タエ子の心理描写もリアルさを極めているように感じます。

自分もタエ子と同じような心の動きや揺らぎがあったなぁと感じ、気づかせてもらえる作品です。

 

そのほかには、キャストの"リアルさ"も特徴的です。

岡島タエ子のキャスト声優は今井美樹(いまい みき)さん、トシオのキャスト声優は柳葉敏郎(やなぎば としろう)さんが務めましたが、それぞれ会話の中での表情の描き方がこれまでにない描き方だと気づく方も多いのではないかと思います。

日本では、アフレコ(アフターレコーディング)といって、後から声を入れることが一般的ですが、アニメーション制作に対して常に革新的な取り組みをされてきた高畑監督は、この『おもひでぽろぽろ』でプレスコ(プレスコアリング)という、声の収録を先に行いその声に合わせてアニメーションを制作するという、欧米では主流の制作方法を取り入れました。

タエ子が笑ったとき表情や頬骨の描き方などにもその特徴を感じられると思います。



『おもひでぽろぽろ』あらすじ|まとめ

アメニーションの表現としても革新的である『おもひでぽろぽろ』。また、主人公の27歳の女性の心の揺らぎを丁寧に描いていることで、観ている側の心も突き動かされる作品です。

今、親となってから観ると心の奥深くに染み入る作品ですが、子どもはまだ感じることが少ないかもしれません。でも"昭和の時代の暮らしぶり"を丁寧に描いているこの作品は、現代を生きる子どもにとって、何か感じるものがあるでしょう。この作品を、子どもの成長とともに何度も一緒に観て、大人に向かって歩いている小さな心を耕してあげられたら、と感じさせる作品です。



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