『風立ちぬ』って、そもそもどんな意味?風が吹くのか吹かないのかどっち?と思いませんか?
そしてスタジオジブリ作品『風立ちぬ』は「難解」や「意味不明」など「よくわからない」と捉えている人が多い作品です。
それもそのはず、いつも子どもたちのために映画を作ってきた宮崎駿監督が、今回「大人向けの映画」として制作したのがこの『風立ちぬ』です。
かといって、大人でも理解ができない部分はあるもの事実。
公開当時は、最後の宮崎駿監督長編作品といわれていた『風立ちぬ』について、言葉の意味や視聴者から「わからない」と評価されることについて、考察してみます。
『風立ちぬ』の意味は?
「風立ちぬ、いざ生きめやも」の意味は、
風がおこる。生きようとしなければならない「Le vent se lève, il faut tenter de vivre」。
フランスの詩人、ポール・ヴァレリー「海辺の墓地」の中にある詩の一節です。
風が吹いたりやんだりするように、人は生き続けなければならない、といった感じでしょうか。
とても深い言葉ですよね。
人の命を「風」にたとえ、生と死について「風のようなもの」とうたい、
(かぎりある命)だからこそ、今を大切にして生き続けよう!と私は解釈しています。
映画『風立ちぬ』のキャッチコピーは「生きねば。」
宮崎駿監督がいつも子どもたちに向けた映画を制作する際のテーマとしている「この世は生きるに値する」を、大人に向けて発信している映画と言えるのではないでしょうか。
『風立ちぬ』の意味は?|原作はどれ?小説がある?
映画『風立ちぬ』は、宮崎駿監督が「月刊モデルグラフィックス」という模型雑誌に2009年から2010年に連載していた同名の漫画を原作とした作品です。(ちなみに、漫画での主人公の堀越二郎は豚で、他の登場人物も豚に擬人化されています)
そして「風立ちぬ」という小説もあります。作者は堀辰雄(ほり たつお)さんで、この小説は堀辰雄さんの実体験をもとに執筆された作品です。
宮崎駿監督は、実在した航空技術者である堀越二郎と堀辰雄の半生を描いた小説を織り交ぜて、連載漫画を執筆しました。
「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」
映画の冒頭にあるこの言葉は、そんな意味があったんですね。
ちなみに、堀辰雄さんの婚約者であり、結核を患って命を失った矢野綾子さんが「菜穂子」のモデルといわれています。
『風立ちぬ』の堀越二郎と堀辰雄
宮崎駿監督が敬意を表したお二人は、どのような方なのでしょうか。
零式艦上戦闘機の設計者として有名。新三菱重工業を退社後は、大学講師や飛行機墜落事故の原因究明など飛行機のあらゆる面で尽力。享年78歳。
婚約者の肺結核での死をきっかけに『風立ちぬ』を執筆し代表作となる。
自身も肺結核を患っていた。享年48歳。
『風立ちぬ』が意味不明なのは、堀越と堀、二人の人生を描いているから?
映画では"(サバの骨であろうとも)美しいものに目がない"あの「零戦」の開発で中心的役割を担った堀越二郎の半生を描きながら、二郎が成年となった後半では菜穂子との生涯を描いています。
堀越二郎の航空機の設計に関わるストーリーと堀辰雄の描いた主人公と菜穂子との出会い・生涯を、関東大震災という混乱の時代を描きながら、宮崎駿監督の中で醸成されていったものが『風立ちぬ』であり、この展開が"意味がわからない"などと言われるきっかけになっているのでは?と感じています。
また、あのカプローニの存在も"なぜ出てくるの?"なんてツイートも見受けられます。
宮崎駿監督は実在したイタリアの航空機設計者であるジャンニ・カプローニについて「二郎と時空を超えた友情」と「同じ志をもった二人の姿」を描くと語っています。
二郎の夢の中でのみ登場する人物ですが、私は「美しい飛行機を愛する二人の志」を視聴者にナビゲートしてくれる存在として観ていました。
宮崎駿監督は、そんな主人公堀越二郎について「正直な人間」と語っています。
庵野秀明さんが二郎のキャスト声優を務めたことも、宮崎駿監督曰く庵野さんが「正直な人間そのもの」であるからで、庵野さんに決めた時の宮崎駿監督の喜び様はとても印象的です。
くわしくはこちらをどうぞ。
ところで『風立ちぬ』の主人公堀越二郎の少年時代のあの男の子って、宮崎駿監督に見えませんでしたか?
実際は、宮崎駿監督のお父様をイメージされていると言われているようですが、飛ぶことに夢中になっている姿や、視力が悪いのでパイロットになることができないなど、観ていて飛行機に詳しい宮崎駿少年を重ねてしまいました。
『風立ちぬ』の意味は?まとめ
・航空技術者 堀越二郎と、小説家 堀辰雄「風立ちぬ」を織り交ぜて、宮崎駿監督が連載漫画を執筆した「風立ちぬ」が映画の原作。
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