スタジオジブリの作品の中には多くの印象的な食べ物が登場しますよね。
この食べ物たちは「ジブリ飯」とも呼ばれ親しまれています。
『魔女の宅急便』でキキが必死になって届けるカボチャとニシンのパイ、『千と千尋の神隠し』で千尋の両親が食べて豚に変えられてしまう神様の食べ物、『火垂るの墓』の節子の好物のドロップ…。
どの食べ物も、耳にしただけでその作品の光景が目の前に浮かんでくるものばかりです。
そんななか、宮崎駿監督作品『風立ちぬ』で印象的な食べ物といえばやはり「シベリア」ではないでしょうか。
名前も見た目もとても印象的なお菓子である「シベリア」、このジブリ飯について深掘りしていきたいと思います。
『風立ちぬ』のシベリア|二郎の行動が偽善と言われるのはなぜ?
作中で主人公堀越二郎はシベリアを売店で2つ買い、路上で親の帰りを待っている子どもに分け与えようとします。
しかしその子どもに拒絶され、逃げられてしまいます。
この出来事を二郎が勤める会社の同期の本庄に話すと「それは偽善だ」と言われてしまいます。
このシベリアをめぐる一連のシーンは、この作品を理解する上で非常に重要なシーンであると考えられます。
二郎と本庄は全く違う性質の2人です。
本庄は今自分が携わっている仕事と社会情勢の矛盾について既に意識的なのです。
自分たちはシベリアを買って人に分けてあげられるほどの余裕のある暮らしをしていますが、その暮らしを支えているのは国が自分たちが勤める会社に戦闘機の開発を依頼しているためです。
その国からの資金の出どころはというと、それは国民の税金です。
貧しい子どもの生活の上に、二郎たちの余裕ある生活は成り立っているのです。
そのような割り切れない矛盾を抱えていることに本庄はとても意識的ですが、二郎はそうではないようです。
二郎は、あの子どもはきっとお腹を空かせているだろから、シベリアをあげたいというとても純粋な気持ちだったのだと思います。
しかし路上で親の帰りを待っていた子どもは物乞いのような扱いをされて、深く傷ついたかもしれません。
二郎が行った、その子どもたちに路上で食べ物を分けてあげようとする純粋な親切心は一見、善いことように思えて実は社会的に考えても、子どもの心情を考えても、偽善であるとも捉えかねないのです。
このシーンは、単純に善か悪かに二分できない人間とその人生、しかし「生きねば」ならないんだ!
『風立ちぬ』という作品の強いメッセージに繋がるとても重要なものです。
『風立ちぬ』のシベリア|モデルは西武柳沢駅近くのパン屋さん?
『風立ちぬ』のに登場するシベリアのモデルとなったお店はどこなのでしょうか。
それは、西武柳沢駅近くにかつて存在した「サン・ローザ」というお店です。
聞くところによると、『風立ちぬ』の制作当時、スタジオジブリのスタッフがシベリアを100個注文して買っていったそうです。
昭和の雰囲気を残した味のあるお店でしたが、現在は残念ながら閉店してしまいました。
営業していた当時は、シベリアは一個100円で販売されていたそうです。
50円で購入できるパンもあったようで、とても良心的なお店であったことが伺えます。
『風立ちぬ』のシベリア|意外な作り方とは?
『風立ちぬ』を見て、シベリアの存在を知り、食べてみたくなった方も多いかと思います。
しかしシベリアは、メロンパンやカレーパンのようにどこでも売っているものではありません。
シベリア自体は、カステラの間に羊羹が挟まったとてもシンプルなお菓子です。
しかし作るのには少し難しいポイントがあるのです。
それは、カステラと羊羹が密着しているということです。
確かにシベリアの断面は、カステラと羊羹の間に全く隙間がなくピッタリと一体化していますよね。
サンドイッチのパンと具材のように、カステラと羊羹をバラバラにすることはできなさそうです。
このシベリアの特徴の秘密は作り方にあります。
シベリアはカステラの生地を2枚焼いたのち、一枚の上に羊羹の生地を流し入れます。
その上にもう一枚のカステラを重ねて冷やし固めるという工程を踏むのです。
固まった羊羹を挟むだけだとシベリア独特のカステラと羊羹の一体感は生まれないんですね。
シベリアは大手菓子パンメーカーからも出ているので、運が良ければスーパーやコンビニで購入できますが、なかなか近くで売っているお店が見つからないない、という方はぜひシベリア作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
『風立ちぬ』のシベリア|まとめ
『風立ちぬ』で話題になったお菓子「シベリア」、いかがだったでしょうか。
シベリアがレトロで美味しそうなお菓子として気になった方も、あのシベリアをめぐる一連のシーン全体が気になった方も、ぜひもう一度作品を見直してみると、作品の見方がすこし変わって現在の社会情勢や、現在の自分のお腹の減り具合も見直すきっかけになるかもしれませんね。
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