宮崎駿監督が主人公・堀越二郎の声優オーディション時、庵野秀明さんの声を聞くなり「やって!」と本人に語った時の笑顔が、この主人公のイメージには唯一無二の声なんだと私は感じました。
宮崎駿監督作品、2013年公開の『風立ちぬ』は、主人公・堀越二郎の半生を描いた作品で、映画監督の庵野秀明さんがキャスト声優を務めたことで、当時大変話題になりました。
この、堀越二郎役の声について「失敗」「ひどい」「下手すぎる」「棒読み」などなど、さまざまな意見がネットにあがっています。
また、逆に「良かった」「自然と感情移入できた」などの意見も見受けられ、評価が分かれているという印象です。
はてさて"あの"スタジオジブリが「失敗」なキャスティングをするのでしょうか?本当にこれは「失敗」だったのでしょうか?
キャスティングを庵野秀明さんに決めた、当時の宮崎駿監督の様子を交えながら、考えていきたいと思います。
風立ちぬの声優はひどい?賛否両論、評価はさまざま
ネット上では、堀越二郎役の声について、さまざまな声があがっています。
まずは、否定的な意見を見て見ましょう。
なかなか手厳しい意見ですね。
では、肯定的な方の意見をみてみましょう。
肯定的な意見の方は、主人公の"エンジニアっぽさ"が出ていたとか、個性的で上手な声優を求めるなら、超人的な普通のアニメを見ればいいのでは?など、否定的な方に対しての意見も見受けられました。
風立ちぬの声優は失敗か?宮崎駿監督の表情にその答えがある?
では"なぜ、素人の庵野秀明さんをキャスティングしなければならなかったのか"ということについて考えてみました。
なぜ?の問いに答えようとするならば"宮崎駿監督が決めたから"ということなんだと思います。
ってことは、庵野秀明さんの声は堀越二郎にぴったりの声だ、ということですね。
スタジオジブリを題材にして制作されたドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』(2013年公開 砂田麻美監督)には、当時作業が進められていた『風立ちぬ』の制作現場が描かれていて、宮崎駿監督・鈴木敏夫プロデューサーが堀越二郎の声優を庵野秀明さんに決めた瞬間が収められています。
その中で、宮崎駿監督が、当時主人公の声優候補としてあがっていた方々の声を聞いて「これじゃないな」と感じた理由を"みんな同じような声で(自分は)相手の心を慮って(おもんばかって)います、と思わせるような声だ"(だから二郎の声とは違う)と表現しています。
また宮崎駿監督は、その当時、堀越二郎のようなズバ抜けて頭のいい人は、滑舌が良く、声が高いとも語っています。
そして、鈴木敏夫プロデューサーが"素人の方がまだましか・・・"とのつぶやきから、庵野秀明さんの名前が出てくるのでした。
それを聞いた宮崎駿監督は、庵野秀明さんに対して"(あの男は)誠実な男、嘘をつかない男"と語っています。
これらのことが、宮崎駿監督が描く"堀越二郎像"にピタリとハマったのでしょう。
そして、オーディション当日。
宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーが、たどたどしくセリフを言って、オーディションを受けている庵野秀明さんの声を聞きながら、大きくうなづき、満面の笑みでご本人に「やって!」と一言。
その笑顔を見た庵野秀明さんは「宮さんに言われちゃあ、断れないですよ」と一言。
風立ちぬの声優は下手?大抜擢された庵野さん本人は?
こんな流れで主役の声優を務めることになった庵野秀明さんご本人は、どんな気持ちだったのでしょうか。
風立ちぬの声優は失敗か?|ご本人は「まぁ、無理だろう」と思っていた!
正直、オーディションを受けても受かるワケはない「まぁ、無理だろう」と考えていたようです。
しかし、本人の思惑とは真逆の展開になったことと"しばらく見たことのない満面の笑み"を浮かべた宮崎駿監督からの「やって」の一言に"これはやるしかないんだな"と感じたようです。
風立ちぬの声優が失敗だったら「僕を選んだ二人が悪い」と思っていた!
できるかどうかは別として、やれることはやります、と引き受けたようですが"ダメだったときは、僕を選んだ鈴木さんと宮さんが悪い"と思っていたとご本人が語っています。
この時点で「いやぁ、僕じゃダメでしょ!」と言わないことが、庵野さんの人柄を伺えわせるエピソードだな〜と感じました。
風立ちぬの声優はひどい?|主人公は「寡黙な男」と信じて引き受けた!
宮崎駿監督は、よほど庵野さんの声が主人公にピッタリと感じていたのでしょう、
「寡黙な男でセリフはそんなにないから」と監督から言われていたらしく、それを信じていた庵野秀明さん。
ところが蓋を開けてみれば、ずっとしゃべりっぱなしだし、歌をうたったり、フランス語、ドイツ語もあって"完全にだまされた"と感じていたようです。
風立ちぬの声優はひどい?|役作りは素人だからやっても無駄と思っていた!
宮崎駿監督が"堀越二郎の声にピッタリ"と感じたほどだから、役作りはどのようにされたのだろう?と思いませんか?
それが、なんと!"役作りは、素人なのでやっても無駄、意図してやっていません"と庵野さん。
そして、演じるにあたり、宮崎駿監督から、二郎の役柄についても、注文もそれほどなかったんだとか。
宮崎駿監督としては、庵野さんの人柄も知った上で、演出せず"庵野さんそのまま"を生かしたかったんだということが感じられるエピソードですよね。
そこで、不安になることもなく"自分の素をそのままぶつけて、監督が気に入ればいいし、違えば直していこう"と思いながら演じていた庵野さんも、またすごい方だなぁと感じちゃいました!
風立ちぬの声優はひどい?|アフレコ中、宮崎駿監督はニコニコ顔だった!
そんなエピソードを交えながらスタートしたアフレコ作業ですが、宮崎駿監督はニコニコ、終始喜んでいる様子だったと庵野さん自身が捉えていたようです。
言い換えれば、それは堀越二郎の声を庵野秀明さんが務めたことは「成功」だったということを示しているんでしょう。
風立ちぬの声優はひどい?その他のキャスト声優
では、その他のキャスト声優のみなさんを見ていきましょう。
里見菜穂子(キャスト声優:瀧本美織)
彼女の評価は、ネットでもとても高いものが多かった印象です。
本庄(キャスト声優:西島秀俊)
あまりに自然で、西島さんだとは気づかなかったという声があがっていました。本庄そのものだったということでしょう。
黒川(キャスト声優:西村雅彦)
新入社員の二郎に対し、神経質な性格で、二郎の実力を誰よりも認める上司役がピッタリでした。
カストルプ(キャスト声優:スティーブン・アルパート)
外国人が話す日本語は、やはり日本人にはできないものなんだなぁ、と納得の演技です。
スタジオジブリ海外事業部の取締役部長をされていた方が務めました。
里見(キャスト声優:風間杜夫)
二郎の母(キャスト声優:竹下景子)
堀越加代(キャスト声優:志田未来)
服部(キャスト声優:國村 準)
黒川夫人(キャスト声優:大竹しのぶ)
カプローニ(キャスト声優:野村萬斎)
スタジオジブリは、声優を起用しないことが知られていますが、今回も「どなたが声優を務めるのだろう」とつい気になってしまいます。そしてこの『風立ちぬ』でも、ジブリ初出演の方々が活躍されました。
そしてもうひとつこの作品で気になるのが『風立ちぬ』という言葉の意味です。
調べたら、とても深い意味がありました。詳しくはこちらをどうぞ!
風立ちぬの声優は失敗か?成功か?
庵野秀明さんのキャスティングについて「失敗」と捉える方は"セリフが棒読み"と感じているんだということが、今回わかりました。
では、その「棒読み」が映画の「失敗」に結びつくかどうかは、見た人それぞれの意見として受け止めていくことが大切だとは思いますが、この映画の制作者である宮崎駿監督の様子を知るほどに、そのキャスティングは、ピッタリだったんだと感じざるを得ません。
堀越二郎とは
"このような話し方をする"飛行機を愛し、菜穂子を愛し、設計者として悩みながらその時代の人生を歩んでいた人である。
宮崎駿監督は、こんなことを描きたかったのではないか?と考えたらどうでしょうか。
技術屋(設計士)は、こんな喋り方の人が多いもんね!との声もネットであがっていました。
そうですよね、映画の冒頭のシーン、少年時代の堀越二郎は飛行機のことで頭がいっぱい!(もちろん大人になっても飛行機のことばかりですが)
風立ちぬの声優はひどい?まとめ
いかがでしたか?
今回『夢と狂気の王国』で映画のキャスト声優が決まる瞬間を初めて見ましたが、庵野秀明さんに決めた時の宮崎駿監督の表情が、とても印象的で忘れられないというのが正直な気持ちです。
ネット上でいろいろ語られている、失敗なのか?成功なのか?については、その宮崎駿監督の笑顔がすべて!それが答えなんだということを感じることができるのではないでしょうか。
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