コクリコ坂から|原作漫画と映画の違いは?あらすじや年代背景、学生運動、結末も違うのか?

コクリコ坂から
引用:https://www.ghibli.jp/works/kokurikozaka
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2011年に公開されたスタジオジブリ作品『コクリコ坂から』。

この作品は、同名の漫画が原作だったことをご存知ですか?

 

1980年、少女漫画雑誌「なかよし」に連載されていた「コクリコ坂から」(原作:佐山哲郎,作画:高橋千鶴)ものを、宮崎駿監督が長年、映画化するために構想をあたためていた作品でした。

 

漫画連載時からときは流れ、31年後に映画化となったわけですが、気になるのは原作と映画の違いではないでしょうか?

 

漫画家の高橋千鶴ファンの間では、映画『コクリコ坂から』を見た方の中には"違いすぎる"との声もあるようです。

 

今回は『コクリコ坂から』の漫画(原作)と映画は、どんな点が違うのか?

 

漫画の結末は映画と一緒か?など、一緒に見ていきたいと思います。

 



『コクリコ坂から』原作漫画と映画の違いは?|映画のあらすじ

1963年(昭和38年)初夏の横浜を舞台にして描かれています。

 

主人公の松崎海(まつざき うみ/愛称 メル)は、祖母が管理している「コクリコ荘」で家事など運営を任され、切り盛りしている高校2年生。

 

妹の空(高校1年生)と、弟の陸(中学1年生)そして「コクリコ荘」の下宿人である女性たち3人と暮らしています。

 

医者である母は、現在アメリカ留学中。

 

船乗りである父は、海(メル)が幼い時に亡くなっています。

 

 

海(メル)は、父に会いたい!との思いから、毎朝家の庭に信号旗を掲揚します。

 

その旗がきっかけとなって高校の一年先輩である、風間俊(かざま しゅん)と知り合うように。

 

 

物語のキーとなっているのは、二人が通う高校の文化部部室棟となっている清涼荘(通称:カルチェラタン)。

 

このカルチェラタンの取り壊しを反対する運動を俊や生徒会長の水沼たちをはじめとした反対派が起こします。

 

ほとんどの生徒が取り壊しに賛成している中、劣勢だった俊たちに対し、カルチェラタン存続のためには掃除をすればいいのでは?と海(メル)が提案したことで、取り壊し反対派の女子生徒も集まり、最終的にカルチェラタンは取り壊しを免れることになります。

 

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『コクリコ坂から』原作漫画と映画の違い|メルの印象

一番の違いといえば、主人公メルの印象が全く違うということです。

 

漫画の表紙からも印象の違いが受け取れますね。

 

ひとつずつみていきましょう。

 

 

 

コクリコ坂から|原作と映画の違い メルは活発な女の子

 

映画ではメルは、留守にしている母に変わって「コクリコ荘」を切り盛りする、清楚で良妻賢母なイメージ。

 

しっかりして、凛とした雰囲気を持っている女の子です。

 

 

漫画では、男子に対して平気で怒鳴りつけるなど、とても快活な女の子として描かれています。

 

ちなみに、映画では松崎姓ですが、漫画では小松崎となっています。

 

また、映画ではメルが朝食を準備するまでのシーンがとても印象的に描かれていますよね。

 

漫画では、メザシばかりを食卓に出し、魚嫌いの祖母に叱られるなどのシーンが描かれています。

 

なんだかこのあたりは、当時の少女漫画にありがちなストーリで、微笑ましい感じです。

 

さらに、漫画に「コクリコ荘」という名称が出てくることはなく、母の実家に下宿人が住んでいるという設定になっています。

 

 

コクリコ坂から|原作と映画の違い 片想いの男性がいた

 

漫画と映画では、基本的な設定は同じ部分が多いですが、キャラクターの設定に違いがあったり、出てこなかったりなどさまざまです。

 

そのなかで映画女性として登場する「コクリコ荘」の下宿人北斗美樹さん(医者)の設定が変わっています。

 

原作の漫画では、北斗さんは男性(北見北斗)で獣医の卵です。

 

そして漫画ではメルが北斗さんに憧れており、それは北斗さんが北海道へ引っ越すまで、片想いのままで終わってしまいます。

 

 

ちなみに、海にメルという愛称をつけたのは、この漫画に登場する北見北斗さんです。

 

そして、メルは自分と俊との関係を知った後に、別の男性と付き合うという描写もあります。

 

このストーリーを聞くと、高橋千鶴さん(原作の作画)ファンの方から"原作と違いすぎる"との声が上がるのも無理ない・・です。

 

逆に、原作者の佐山哲郎さん、作画の高橋千鶴さんがスタジオジブリ作品を観たときの印象が気になりませんか?

こちらの記事でご本人のインタビューも交えてご紹介しています。

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『コクリコ坂から』原作と映画の違い|学生運動の目的

 

映画では、文化部部室のカルチェラタン存続を訴える学生運動が描かれています。

 

生徒会長の水沼をリーダーとして新聞部部長の風間俊たちが凛々しく見えるシーンでもありますね。

 

漫画では、制服廃止が学生運動の目的として描かれています。

 

カルチェラタンが漫画に出てこないことに、びっくりする人も多いようです。

 

たしかに、とても印象的あのカルチェラタン!

 

当時の生徒たちの熱い思いや、存続に至るまでの過程。

 

そして、メルと俊の心の動きも並行して描かれてドキドキしながら展開を楽しんでみていた私も、漫画にカルチェラタンが登場しないと知った時はびっくりでした。

 

 

メルと妹の空が"男子学生しか入らない汚い古い建物"カルチェラタンに入ろうとするシーンはとても印象的ですよね。

 

この時代(昭和38年)は、こんな部室で学生たちは放課後過ごしていたんだなぁ、と匂いまで感じさせてくれるような描写。

 

そしてこの印象的な建物が綺麗になっていく様子も、映画では丁寧に描かれています。

 

続いての原作と映画の違いは、俊や水沼のキャラクターです。

これも、ちょっとビックリですよ!

 



『コクリコ坂から』原作と映画の違い|俊や水沼の素行

生徒会長の水沼と新聞部部長の風間俊の描き方も、ずいぶん映画と違った描写になっています。

 

漫画では、なんと!高校生ながら酒・タバコ・賭け麻雀をするなど、映画での品行方正なイメージはどこ?というほど違うイメージとなっているのです。

 

そして、漫画の学生運動の目的も、実は二人が賭け麻雀で大負けし、借金を抱えることになった二人が自作自演を発案。

 

学校で騒動を起こすことで新聞の売り上げを伸ばし借金返済に充てよう、という"映画とは違う"頭の良さを発揮するような、不良学生として描かれています。

 

たしかに、こんな素行は映画で描くことができないような気がします。

 

ちなみに、風間俊とメルの父親が同一人物で、二人は兄妹かもしれないというストーリーは漫画も映画も同じです。

 

漫画では、メルの母親(虹江)の職業がカメラマンです。

 

水沼はその虹江の手伝いをしており、その時に風間俊とメルは兄妹ではないかということに気がつき、風間俊に伝えます。

 

そして、メルは祖父(映画では故人)から、俊との関係を知ることになります。

 

こうしてみると、違う点がたくさんありますよね。

 

逆にこのようなストーリーである原作漫画を、あのような展開にするスタジオジブリの凄さを改めて実感しました。

 



『コクリコ坂から』原作と映画の違い|年代背景

映画で描かれた年代は1963年(昭和38年)の5月から6月です。

 

漫画で描かれている年代は1970年代です。

(少女漫画雑誌「なかよし」連載は1979年12月から1980年7月)

 

この年代の違いは、昭和30年台の日常の生活様式などをはじめとしたシーンにも描かれていますが、いちばん大きく違う点は、メルの父の死についてではないでしょうか。

 

漫画では、メルの父は船の遭難で亡くなったというストーリーを、映画では朝鮮戦争中、戦車揚陸艦(LST)が機雷により沈没して亡くなったというストーリーに変更されています。

 

ここには、宮崎駿監督の思いが込められているように感じます。

 

当時を知らない人たちが見る映画として"後世に残さなければいけないこと、知っておかなければいけないこと"を教えてくれていると私は捉えています。

 



『コクリコ坂から』原作と映画の違い|ラスト結末はどう?

漫画(原作)と映画で結末を比較すると、結果同じでした。二人は兄妹ではなかった、というストーリーです。

 

漫画のレビューを見ると、物語のラスト、最後の最後で「えっ!こんな展開で終わるの」という声も多く、もしや連載が打ち切り?

などの裏事情を詮索するようなものも見受けられます。

 

ということは、

 

漫画と映画では、基本設定は踏襲しているものの、キャラクター設定その他については違う点が多いものの、結論は一緒だったということになるようです。

 



『コクリコ坂から』原作と映画の違いは?|まとめ

1980年に連載されていた「なかよし」世代の私としては、原作も時代の世相を反映したストーリーでとても好きでした。

 

映画で『コクリコ坂から』を知った方々の中には、原作とのあまりの違いにビックリした!

という声も多く、また、原作は原作で映画とは別の話として楽しめたという声もありました。

 

その"違い"という角度からみると、脚本を手がけた宮崎駿さんと丹羽圭子さん、お二人の"この映画を通して視聴者に伝えたいこと、後世に残していきたいこと"が伝わってきたような気がしています。

 

 

映画をきっかけにして原作に触れる、またその逆もスタジオジブリ作品の楽しみ方の魅力のひとつではないでしょうか。

 

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