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思い出のマーニーは意味がわからない話か?解説と考察をしてみた

思い出のマーニー
引用:https://www.ghibli.jp/works/marnie
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『思い出のマーニー』は、ジブリ作品の中でも特に評価が極端に割れることで知られています。

実際に私の周りで『思い出のマーニー』を一度でも見たことがある方々に感想を聞いてみました。

すると、おもしろいくらいに「好き」か「嫌い」かの両極端のみの感想でした。

今回は、杏奈とマーニーを中心に頼子、久子、十一、さやか、との関係を踏まえて「意味がわからない」の解説と考察をしていきます。




 思い出のマーニーの意味がわからないと言われる理由はなぜ?

『思い出のマーニー』は、なぜ両極端に評価が分かれるのでしょうか?

「好き」と答えた方々の中で多かった感想には、杏奈の周りを取り巻く環境や大人について、さまざまな意見があるなか、主には次のようなものが目立ちました。

・『思い出のマーニー』のヒロイン、杏奈の成長について
・杏奈の祖母、マーニーの思いについて
一方、否定的な感想を持つ方は、口をそろえて次のような印象を持っています。
・難しい話だった
・意味がわからない映画だった
・結局何を伝えたかったのかわからない

 

『思い出のマーニー』を何度も視聴し、徐々に好きになった方。

そんななか「嫌い」と答えた方もいる。

では、なぜ難しい話だと感じるのでしょうか。

10個の見出しに分けて、わかりやすく解説・考察していきます。



 思い出のマーニーが意味不明?伏線から解説・考察

『思い出のマーニー』の意味がわからない。

およそ100分も視聴して、なぜそのような悲しい感想となってしまうのでしょうか?

その答えは『思い出のマーニー』のストーリー構成に隠されていました。

 

『思い出のマーニー』のストーリーには、前半部分に複数の伏線が張られています。

伏線とは、物語で今後起こるであろうことを視聴者に期待させる前振りのこと。

そして、後半部分で前半の疑問が明らかになっていくという展開です。

 

一般的に、どんな物語にも必ず伏線が張られています。

同じ展開でわかりやすい例を挙げると、刑事系のドラマや映画です。

物語の前半部分で犯人を含めた人物が次々と登場。

全員の疑惑がどんどん深まった後半で犯人が特定されますね。

 

『思い出のマーニー』では、張られた伏線が複数あるために、後半の答え合わせが難しい印象の作品となっているのです。

 

初めて『思い出のマーニー』を視聴した方がまず追う伏線は、ヒロインの杏奈と杏奈の祖母、マーニーの関係性でしょう。

二人の関係性の伏線だけだと、シンプルでわかりやすいですね。

ただし、この伏線に、杏奈の暗い心理的描写杏奈を取り巻く環境マーニーの人間性昔話などが加わってきます。

 

つまり、

杏奈の妄想なのか。
現実なのか。
マーニーの過去なのか。
マーニーと杏奈の現在なのか。
それとも未来なのか。

 

時系列が複雑な上、伏線が多すぎる前半

それにも関わらず、それぞれの伏線が理解できないまま、どんどん話が進んでいきます。

結果、「意味がわからない」という印象に繋がってしまうのです。

 


思い出のマーニーが意味不明?杏奈(あんな)と母頼子との関係

『思い出のマーニー』のヒロイン杏奈と、杏奈の母、頼子は血のつながった親子ではありません

頼子が杏奈の本当のお母さんではないとわかる決定的な一言は、杏奈が喘息の発作を起こしたシーンです。

杏奈を診察した医師に向かって「やっぱり血が繋がってないからなのかな」と頼子は涙を浮かべます。

杏奈のお母さんだと思って見ていたにも関わらず、この突然の一言で頭が混乱しますね。

『思い出のマーニー』の意味不明な要素に加担しているシーンと言えるでしょう。

 

一方、頼子の一言で杏奈が頼子に対してどこかよそよそしい対応をしているのが、ただの反抗期ではないことが明らかになります。



頼子は、どのような経緯で養母になったのでしょうか?

杏奈がまだ赤ちゃんの頃までさかのぼりましょう。

杏奈の父親と母親の絵美里は、ある日事故で一緒に亡くなってしまいます。

その後、杏奈の祖母であるマーニーが杏奈を引き取りました。

しかし、マーニーとの生活も長くは続きませんでした。杏奈が2歳の頃。引き取ってくれたマーニーも病気で亡くなってしまうのです。

では、頼子は杏奈と血のつながった実の親子ではないが、杏奈の親戚なのか?という疑問が出てきますね。

 

残念ながら、親戚でもありません。

じつは、杏奈が身近な家族を全員失った際、杏奈は親戚中から引き取ってもらえなかったのです。

 

そこで杏奈を養子として引き取ったのが現在の母、頼子でした。こうして頼子は、杏奈の養母となったのです。

 


思い出のマーニーが意味不明? 湿っち屋敷に惹かれる杏奈

「なんだろう。あの屋敷、知ってる気がする。」

『思い出のマーニー』ヒロイン杏奈が、初めて湿っち屋敷を見た時につぶやいたセリフです。

初めて訪れたはずの場所なのに、既視感を覚えることは、現実世界でもたまにありますね。

そのような場合、たいていが何かにとてもよく似ている。

本当は初めてではないのに見たことや聞いたことを忘れてしまっている。

という状況が多いのではないでしょうか。

もしそうではなかったら、ホラー要素になってしまいます。

 

杏奈の場合、湿っち屋敷を訪れたのはセリフをつぶやいた際が初めてでした。

ただ、杏奈の祖母、マーニーから湿っち屋敷の話を小さい時に聞いていたけれど忘れてしまっていた

という状況が当てはまるでしょう。

 

また、物語の終盤に現れる湿っち屋敷の写真には、マーニーが「大好きな家」と裏面に書いています。

湿っち屋敷がマーニーにとって大好きな家であれば、小さかった杏奈に楽しい昔の話として何度も話していたに違いありません。

「おばあちゃんが子どもの頃はね~」という昔話は、祖父母や親戚と近しい関係の方であれば、幼少期に必ず経験する環境でしょう。

こうして、忘れてしまっていてもマーニーの話が杏奈の無意識の心理状態である深層心理に働きかけていた。

杏奈の知らぬ間に湿っち屋敷に惹かれていた。と考えるのが自然です。



思い出のマーニーが意味不明/マーニーと出会う

ヒロイン杏奈と杏奈の祖母、マーニーに出会うシーンは、『思い出のマーニー』のメインである出来事。

『思い出のマーニー』は、杏奈とマーニーが出会ったことにより、杏奈がマーニーの正体を追いながら進む作品です。

初めて杏奈とマーニーが出会う場面は、明らかに杏奈の夢の中。

出会ってすぐの杏奈とマーニーは

「あなたは誰?」という他人の距離感でした。

 

そして、マーニーの正体を杏奈が追い求めるにつれて、杏奈の夢の中や想像の感覚から外れていきます。

徐々にマーニーが杏奈の日常生活に入り込み、現実味を帯びてくる存在となるのです。

これだけであれば、さほど意味不明ではありません。

 

しかし、杏奈とマーニーが出会う場面が増えると、おかしな点に気がつくことでしょう。

杏奈がマーニーに会える場所は、湿っち屋敷です。

 

昼と夜の異なる湿っち屋敷の姿にお気づきでしょうか。

 

昼間の湿っち屋敷は、お世辞にも綺麗な場所とは言えない姿。

ボロボロで荒れ果てています。

一方、夕方から夜にかけては、綺麗で素敵なお屋敷の姿に大変身。

人の出入りまであります。

 

湿っち屋敷の姿が時間帯によって変わっている点が、

杏奈の夢の中なのか。

現実に起きていることなのか。

だんだんと区別がつきにくくなっていく原因だと言えます。

 

ホラー映画ではないのに、少し気味が悪いですね。

また、杏奈が湿っち屋敷の姿が違うことを疑問に思っていないのか?不思議ですよね。

 

この湿っち屋敷が姿を変える現象は、マーニーの存在が杏奈の夢の中であり、マーニーの日記の中の記憶でもあるということを裏付けています。

 

杏奈が実際に見ている湿っち屋敷の姿は、ボロボロ。

しかし、マーニーの中では、かつての綺麗なお屋敷。

杏奈の記憶とマーニーの日記が杏奈の中で混ざっているため、杏奈は湿っち屋敷の変化に驚かないのです。



思い出のマーニーが意味不明/杏奈がマーニーを忘れる

『思い出のマーニー』が意味不明と言われてしまう要因

のひとつ。

それは、話の途中でヒロイン杏奈が祖母のマーニーを忘れることです。

杏奈とマーニーの関係性を紐解きながら話が進んでいたにもかかわらず、突然追うものが消えてしまいます。

視聴している側は、大混乱ですね。

 

この場面あたりで「思い出のマーニーが意味不明」という感想から抜け出せなくなる方が多いことでしょう。

 

なぜ杏奈は、マーニーを忘れてしまったのでしょうか。

それは、杏奈が積極的にマーニーに会う必要がなくなったからだと言えます。

 

物語の冒頭では、杏奈は孤独感や不信感を他人に抱いていることが言葉の端々や態度から表れています。

杏奈は、殻に閉じこもった自分や悩みを理解してくれる相手が必要だったのです。

 

一方、マーニーもマーニー自身の境遇に杏奈が似ていることに気づきます。

こうして二人の関係は支えあうように話が進んで行きます。

しかし、次第に杏奈はマーニーだけではなく、家族や友達にも支えられていると感じるようになります。

こうして現実でも自分をさらけ出せる環境になったことから、あえて杏奈はマーニーに会わなくても孤独ではなくなったのです。

杏奈がマーニーを忘れたことは、杏奈の成長の証だと言えるでしょう。

 

続いては、パーティーのシーンについてお伝えします。

 


思い出のマーニーが意味不明/マーニーが杏奈をパーティーに誘う

ある日、ヒロイン杏奈は、祖母のマーニーに湿っち屋敷で開催されるパーティーへ招待されました。

たいていの人であれば、パーティーは楽しくてワクワクするもの。

でも、物語の冒頭の杏奈は、暗くて社交的ではありません。

杏奈の性格から予想するに、招待されたというよりも、半ばマーニーにパーティーへ連れて行かれたと言えます。

 

杏奈にとっては、パーティーに参加をするだけでも十分大きなこと。

それにも関わらず、パーティーへの参加を嫌がる杏奈に、

マーニーは「大丈夫。パパには話してあるから」と伝えました。

そして、そのまま杏奈のパーティー参加が決定。

 

このセリフから、マーニーの父が杏奈がパーティーに参加することを承諾していることがわかりますね。

パーティーでは、サプライズ演出として、杏奈が花の売り娘として登場します。

てっきり気軽な仮装パーティーの一種か?と予想させておきながら、マーニーも含め杏奈以外は正装。

パーティーの参加者は、きらびやかで豪華な衣装を身にまとい、優雅な時間が漂っています。

 

一瞬、杏奈に対する嫌がらせなのか?と思うほど、杏奈の花の売り娘としての装いが場違いに感じます。

パーティーに初参加の杏奈は、初めての社交界。

初めての雰囲気に飲まれてしまいます。

しかし、花の売り娘の格好というマーニーのサプライズのおかげで、多くの人が杏奈の周りに集まってくれました。

こうして、杏奈は自然と輪の中に入ることができ、無事に社交界デビューを果たすことができたのです。

このパーティーの場面は、杏奈とマーニーの関係を深めるきっかけとなったと言えるでしょう。

マーニーの日記にも、花の売り娘と一緒にパーティーに参加したこと。

楽しい時間を過ごしたことが綴られています。

 

しかし、その後の久子さんとの会話から推測すると、本当はマーニーはパーティーに参加していなかったことがわかります。

日記に書いたマーニーの希望と理想を杏奈と実現させたのです。

 

 



思い出のマーニーが意味不明/マーニーが杏奈を和彦と呼ぶ

『思い出のマーニー』を見ている途中、さらに意味不明だと感じてしまうサイロでのシーン

 

サイロとは、工業用の原料や穀物、飼料を貯蔵している筒状の建物のことです。

田舎や広い土地では、どんっとたたずむ大きなサイロをよく見かけますね。

このサイロでのシーンでは、ヒロイン杏奈の祖母、マーニーが杏奈のことを「和彦(かずひこ)」と呼びます

 

見ている側は「え?どこに和彦?横にいるの杏奈だけど?どういうこと?」と、話の展開に追いついていけなかった方も多いことでしょう。

 

サイロでのシーンを皮切りに、話が最後までわからず、迷宮入りしてしまった方は私だけではないはずです。

マーニーが呼んでしまった和彦とは、マーニーの幼馴染の男の子

のちにマーニーは和彦と結婚するので、和彦は杏奈のおじいさんです。

 

なぜマーニーは杏奈のことを和彦と呼んだのでしょうか

考えられる理由は2つあります。

そもそもサイロは、マーニーにとってはトラウマとなった場所。

マーニーが幼い頃に家族から
「悪い子はサイロに閉じ込めてオバケに魂を抜いてもらうぞ」
と脅かされていたのです。

マーニーにとっては、サイロ=怖い場所という概念が植え付けられていました。

そんなある日、マーニーは本当にサイロに連れて行かれることに。

大きな雷が落ち、みんな怖がってサイロの中に入ることはありませんでした。

しかし、幼いマーニーにはトラウマになるには十分だった出来事でした。

 

マーニーは杏奈に
「他のことは何でも我慢できる。でもサイロだけはだめなの」
と、伝えていることから、本当にサイロが苦手なものだということがわかりますね。

マーニーのおびえた表情からも感じとることができます。

過去のサイロでの出来事では、マーニーのことを和彦が助けに来てくれました。

マーニーが杏奈と過去の出来事を共有するにあたり、和彦と杏奈を重ね合わせて杏奈に体験させていたと言えます。

サイロは、マーニーにとってトラウマとなった場所ですが、和彦との特別な場所でもありますね。



なぜマーニーは杏奈に苦手であるサイロでの出来事を共有したのでしょうか

1つめの理由としては、

その特別な場所を杏奈と共にすることで、マーニーにとって杏奈も特別だということを伝えようとしていたと捉えることができます。

一方、杏奈はというとマーニーが突然消えたことにより、動揺と怒りを隠せません。

「マーニー、あなたまで私を置いて行ってしまった」と、ショックで寝込んでしまうほどでした。

しかし、杏奈がマーニーに消えてしまった理由を尋ねると「だってあのときあなたはあそこにいなかったんですもの」と答えています。

正直、意味がわからないですね。

 

ただし、サイロがマーニーの記憶を杏奈に重ねていた疑似体験だったことを考えると、2つめの理由が見えてきます。

 

つまり、その場にいなかったから消えたように感じただけであって、一緒にいたら置いて行ったりしない

という意味に聞こえませんか。

杏奈の境遇を思い出してみると、家族が自分だけを残して亡くなってしまい、まるで取り残されたサイロでのシーンのようです。

サイロでの出来事は、過去と現在の両方を表しており、最後にマーニーが杏奈を残して先に死んでしまったことを許してほしいというシーンもこれで繋がったのではないでしょうか。



思い出のマーニーが意味不明/久子や十一とマーニーの関係

不思議なお屋敷、湿っ地屋敷。

ヒロイン杏奈の祖母、マーニーの持ち物の中にも湿っ地屋敷の絵があります。

この湿っ地屋敷の絵を描いたのがマーニーの友達、久子(ひさこ)です。

久子は、上品な雰囲気を持った絵描きのおばあさん。

久子が画家なのか、趣味で絵を描いているのかはわかりません。

湿っ地屋敷の絵には、「To Marnie from Hisako (マーニーへ。久子より)」と書かれていました。

マーニーと仲が良かった久子がマーニーに湿っ地屋敷の絵をプレゼントしたことがわかります。

また、久子の描いた絵から破られたマーニーの日記のページが一緒に出てきました。

杏奈は湿っ地屋敷を通じてマーニーに出会い

そしてまた久子が湿っ地屋敷を通して生前のマーニーの姿を杏奈に語る

と、湿っ地屋敷は思い出へと続く扉となっています。

 



 

マーニーのことをよく知る人物は、もう一人。

ひげを生やしたボートのおじいさん、十一(といち)です。

十一は、杏奈が満潮で湿っ地屋敷から帰れなくなった際、ボートに乗って助けに来てくれた人物です。

一見、多くを語らない寡黙で冷たい雰囲気のおじいさん。

「十年に一度しか話さない」と言われているほど無口です。

しかし、杏奈が気兼ねなく話せる数少ない人物

杏奈が困った時に助けてくれた

という状況から、十一は優しい人であることがわかります。

 

また、初めて「十一」という漢字を見た際、「といち」を「じゅういち」と読みませんでしたか。

あながち間違いではありません。

じつは、十一は、十一番目に生まれた子でした。

 

『思い出のマーニー』の原作では、ワンタメニー(Wuntermenny)という名前で十一が登場します。

では、なぜ十一はボートで湿っ地屋敷を訪れたのでしょうか?

湿っ地屋敷は、用事がないと行かないような場所に位置していますね。

その答えは、十一のセリフとマーニーの日記から推測することができます。

十一は、杏奈に向かってボソッと

「マーニー。青い窓の向こうに閉じ込められた少女。遠い昔の話だ」

と、語りました。

この一言だけで、十一はマーニーの当時の様子をよく知っている人物だと言えますね。

 

十一については、こちらの記事で詳しく考察・解説しています

『思い出のマーニー』十一(といち)の正体は花売りの子かを考察!名前の由来も調査!
『思い出のマーニー』での登場人物の中で、おそらく最もミステリアスな存在であろう十一(といち)。 もしかしたら、名前を聞いても顔が思い出せない方もいらっしゃるかもしれません。 十一は、物語の途中で突然ポッと現れ、ヒロイン杏奈を助け出すヒーロー...

 



思い出のマーニーが意味不明/さやかと出てきた日記

『思い出のマーニー』に登場する赤い眼鏡をかけた女の子、さやか。

さやかは、東京から湿っ地屋敷に引っ越してきた11歳の女の子です。

特徴的な赤い眼鏡がどこか都会の雰囲気を出していますね。

さやかは、湿っ地屋敷でヒロイン杏奈の祖母、マーニーの日記を棚の隙間から見つけた重要な人物です。

物語は、さやかが見つけたこのマーニーの日記に沿って次々と謎が明らかになっていきます。

まるで、さやかとマーニーの日記が問題と答えが両方載っている参考書かのように。

 

杏奈とさやかの関係は、さやかの勘違いから始まります。

さやかが見つけた日記にも関わらず、マーニーのことを知っている杏奈をマーニー本人だと思ってしまうのです。

確かに、もし新居で自分が見つけた日記のはずなのに、日記の登場人物であるマーニーのことを知っていたら?

マーニー本人だと思うのが自然ですね。

 

一方、杏奈は日記を読んで驚きを隠せません。

日記には、杏奈が体験したはずのマーニーとの出来事がつづられていたのです。

しかし、「マーニーの存在を誰かに話してはいけない」という約束をマーニーとしていた杏奈。

この約束により、さやかには「マーニーは自分が作った想像の友達」としてマーニーを紹介するのでした。

マーニーの正体が気になっていた杏奈にとっても「想像の友達」という答えが必要だったのでしょう。

以降、マーニーの本当の正体に気づくまで、杏奈の中でもマーニーは想像の友達という位置づけになります。



思い出のマーニーが意味不明/頼子が持っていた写真

ヒロイン杏奈と養母、頼子は、ギクシャクした関係で物語が始まります。

冒頭では、頼子とのコミュニケーション不足から、杏奈は一方的に傷ついていました

杏奈は、養子として引き取ってくれた佐々木夫妻が杏奈に内緒で自治体から養育費をもらっていることを知っていたのです。

つまり、お金が受け取れるから自分は引き取られたと思っていました。

その証拠に、頼子をお母さんとしてではなく、「おばさん」扱いしていました。

養子家庭を援助する制度のはずが、逆に親子関係を脅かす存在になっていたとは、皮肉なものですね。

 

実際はというと、杏奈の解釈とは全く違うものでした。

頼子は、杏奈のことを本当の娘だと思っているくらいに可愛がっていたのです。

杏奈には全く伝わっていなかったため、杏奈にとっては愛している素振りだったと言った方が適切かもしれません。

実の親子関係でもありがちな思春期の「親の心子知らず」状態がリアルな親子関係を表していますね。

そんな杏奈ですが、マーニーとの関わりを経て、頼子にも心を開き、親子関係は修復へと向かいます。

 

話を真っ直ぐ聞いてくれるようになった杏奈に、頼子は古いアルバムにあった写真を見せてくれました。

写真には、マーニーとの記憶が詰まった湿っち屋敷が写っていました。

その湿っち屋敷の写真は、幼かった杏奈が握りしめていたもの

そして、杏奈の祖母が持っていた写真でした。

写真の裏には、「わたしの大好きな家 マーニー」とつづられていました。

こうして、杏奈はずっと知りたかったマーニーとの不思議な関係も、頼子との関係も1枚の写真が杏奈の納得のいく形へと繋ぎ合わせてくれたのです。



思い出のマーニーが伝えたいことは?

『思い出のマーニー』が私たちに伝えたいことは、3つあります。

 

1つめは、誰しもが愛され、ひとりではないこと。

ヒロイン杏奈は、物語の冒頭では「自分はいらない子」「誰からも必要とされない」と思っていました。

しかし、物語が進むにつれて養母、頼子や新しい友達、マーニーの知人と関わることで自分はひとりではないということに気が付きます。

孤独感は、ひとりではなかなか拭えないもの。

友情として、家族として、人としての愛に触れあうことで、自分が愛されていると気づくことができるでしょう。

 

2つめは、過去を含めた今の自分を受け入れること。

杏奈は、幼い頃に両親を亡くし、祖母のマーニーに引き取られます。

しかし、マーニーも亡くなってしまい、養子として佐々木家の一員となったという過去を持ちます。

自分のルーツもわからないまま、青みがかった目や生い立ちにコンプレックスを持っていました。

ひねくれた性格も周りへの冷たい対応も過去のせいと言ってしまえばそれまでです。

ところが、マーニーとの出会いと存在が自分を受け入れるきっかけとなりました。

マーニーとの一連の記憶を体験したことや、杏奈のルーツとなるマーニーの存在を理解したことで、杏奈は自分を受け入れることができましたね。

同じものでも捉え方、考え方によって今見えている景色が全く異なるものになることに気づくことができるでしょう。



3つめは、前を向いて生きること。

人は誰しもが過去に捕らわれがち。

杏奈もそのひとりでした。

杏奈を置いて亡くなってしまった家族への怒り。

そして養子となった微妙な関係の新しい家族。

過去の事実は変えられません。

しかし、自分の置かれている環境や周りの人々との関わり方、先にいなくなった家族への気持ちは全て自分次第で変えられます

杏奈は物語の最後にマーニーを許すことができました。

これは、過去にとらわれている杏奈自身を解放してあげたとも言えますね。

前に向かって歩み始めたということです。

どんな状況でも前を向いていく強さと大切さに気づくことができるでしょう。



思い出のマーニーの意味がわからない まとめ

いかがでしたか。

『思い出のマーニー』が意味不明だと感じる要素。

それは、謎多き登場人物。

そして現実か、夢か、妄想か、理解が追い付かない間に次のシーンへと変わる展開の早さです。

 

実際には、さほど展開が早いわけではありません。

理解度が追い付いていない方が続出しているがゆえ、「意味不明」「ジブリ映画の中で好きではない作品」と言われてしまっています。

登場人物の心情や描写、人間関係を理解した今、もう一度『思い出のマーニー』の世界へ入って確かめたいと感じていただけたことでしょう。

スタジオジブリ作品『思い出のマーニー』は、一度目では味わえなかったおもしろさが次回は待っています。

答え合わせや謎解き感覚で理解しながら、ぜひお楽しみください。

 



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